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カスタマージャーニー作成のステップとテンプレート|初心者向け実践ガイド

カスタマージャーニー作成のステップとテンプレート|初心者向け実践ガイド

「テンプレートを見ても、何をどこから書けばよいのか手が止まってしまう」――はじめてカスタマージャーニーをつくってみた方から、よくそんな声を聞きます。この記事では、最小構成の作成ステップとテンプレートを順番に解説します。手順どおりに進めれば、まず1枚つくれるようになるかと思います。

カスタマージャーニーの定義や目的そのものについては カスタマージャーニー を、可視化の型(マップの形式や列の設計)については カスタマージャーニーマップ をあわせてご覧ください。この記事は「まず手を動かして1枚つくる」ことに焦点をあてています。

進め方のイメージとして、「①粗くてもよいので1時間程度で組み立てる」「②そのあとでデータや検証を加えて精度を上げていく」、という二段階で考えると無理なく進められます。

たとえば、公益財団法人放送文化基金のウェブサイトリニューアル では、ワークショップやヒアリングを通じて「誰に何を届けたいか」を改めて言葉にし、散在していた膨大なコンテンツをユーザー視点でアクセスしやすい構成に再構築しています。

また、自動車部品をはじめとする製造業系企業のサイトリニューアル では、3種類のペルソナを設定した情報設計をもとに、ユーザーが直感的に目的の情報へたどり着ける構成を実現しています。いずれも「ユーザー理解と情報整理を先に揃える」ことが、後工程をスムーズにしています。


作成前に決めること(スコープと目的)

最初にやることは、地図を描く前に「どこの地図を描くのか」を決めることです。対象とゴールがあいまいなままだと、書き出した内容が散らかり、途中で手が止まりやすくなります。決めることは、大きく次の3つです。

  • 対象 :どの商品・サービスの、どのフェーズ(新規獲得なのか、継続・解約防止なのか)を見るかを選びます。
  • 期間 :どの時間軸(初回接触から購入までなのか、購入後の継続までなのか)と、どの接点(WEB・店舗・営業・CSなど)までを対象にするかを決めます。
  • 目的 :1行で書きます。たとえば「申し込みフォームでの離脱を減らす」のように、後で「これは目的に沿っているか」を判断できる粒度にしておくと、迷ったときの判断基準になります。

この段階で目的やキーワードの認識を揃えるための手法について詳しく知りたい方は、デスケルメソッドカードの VISION & MISSION -目的共有-DEFINE KEYWORD -言葉定義- の考え方が参考になります。

デスケルメソッドカードとは?

デスケルが現場のワークショップで使っている、思考と対話を進めるためのカード集です。リサーチ・発想・合意形成など、プロジェクトの場面ごとに使い分けるツールで、参加者が同じ言葉と手順で議論できるようにします。本記事では、カスタマージャーニーの作成で実際に使うカードを順に紹介していきます。デスケルメソッドカード一覧はこちら

スコープ定義シートのテンプレート。対象・期間・目的(1行)の3項目について、内容と準備のヒントを記入する表

この段階で「これができていればOK」 :対象・期間・目的の3点が1行ずつ言葉になっていれば、次に進めます。


前提を揃える(ペルソナ/シナリオ)

「誰の体験を描くのか」が決まっていないと、同じ接点でも人によって受け取り方が違うため、メンバー間で解釈のズレが生まれます。このズレを防ぐために、最小限のペルソナとシナリオを先に用意します。

ペルソナは細かくつくり込む必要はありません。この段階では、次の3点があれば十分です。

  • 属性 :立場・状況
  • 目的 :何を達成したいか
  • 障壁 :何に困っているか

あわせて、そのペルソナがどのゴールに向かって動くのかというシナリオ(例:資料を探す→比較する→問い合わせる)を1本決めておきます。

ペルソナがまだ整っていない場合は、先に ペルソナとは何か? を参照して、最小限の人物像を用意してから戻ってくることをおすすめします。

ペルソナや前提を、思い込みではなく実際のユーザーの声から固めたいときは、デスケルメソッドカードの INTERVIEW & ENQUETE -質問調査-OBSERVATION -行動観察- が役立ちます。前述の 放送文化基金 の事例でも、各事業の担当者へのヒアリングを重ねて「思い」を言語化したことが、その後の情報設計の指針になっています。

この段階で「これができていればOK」 :「誰の」「どのシナリオを」描くのかが、1人分・1本分だけでも決まっていれば次に進めます。


フェーズを分解する(顧客の流れを切る)

次に、顧客がたどる流れを時系列のフェーズに分けます。フェーズは、顧客の気持ちや状況が切り替わるところで区切るのがコツです。

代表的な分け方は「認知→比較→検討→購入→利用→継続(推奨)」です。BtoCであれば、もう少し短く「知る→気になる→試す→買う→使い続ける」と粗く切っても構いません。BtoBであれば「課題認識→情報収集→比較検討→商談→契約→オンボーディング→活用・継続」のように、関係者が多く社内での比較検討や調整の段階が加わる分、ステップが増えます。

粒度は、多すぎても少なすぎても扱いにくくなります。最初は5〜7段階を目安に、迷ったら粗いほうから始めて、必要に応じて分割するのが進めやすい方法です。フェーズごとの体験を地図として描く考え方は、デスケルメソッドカードの JOURNEY MAP -体験地図- が参考になります。

フェーズ候補一覧。入口・関心・検討・決定・利用・継続の各段階について、BtoCの例とBtoBの例を対比した表

この段階で「これができていればOK」 :左から右へ、フェーズが重複なく一本の流れでつながっていれば次に進めます。


接点・行動・感情を書き出す(まずは仮でOK)

フェーズが決まったら、各フェーズについて「接点」「行動」「感情」を書き出していきます。ここはきれいにまとめようとせず、まずは仮でどんどん埋めるのがポイントです。

  • 接点 :顧客が触れる場のことです(WEB/店舗/営業/CS/アプリなど)。
  • 行動 :そのフェーズで顧客が実際にすること(検索する、資料をダウンロードする、問い合わせるなど)です。
  • 感情 :そのときの気持ち(不安、期待、面倒など)を書きます。感情は、あとで改善の優先順位を決めるときの重要な手がかりになります。

この作業は意見や付箋が散らかりやすいので、壁面やオンラインボードに貼り出して全員で見えるようにし、似たものをまとめながら進めると整理しやすくなります。情報を壁一面に可視化して共通認識をつくるデスケルメソッドカードの DATA WALL -情報壁面- や、出てきた要素を分類する CLUSTERING -情報分類- が役立ちます。実際に 放送文化基金 の事例でも、会議室の壁一面に現状サイトの画像を貼り出し、気になる点に付箋を貼って課題を可視化することで、意見が集中する箇所=重要な課題を一目でわかるようにしています。

書き出し用テンプレート(行×列)。認知・比較・検討・購入・利用・継続のフェーズを列に、接点・行動・感情を行に配置したマトリクス表

この段階で「これができていればOK」 :粗くても、フェーズをまたいで接点・行動・感情の流れが一貫してつながって見えれば次に進めます。


課題と機会を抽出する(改善点の種を作る)

書き出した内容を眺めると、感情が下がっている箇所や、流れが途切れている箇所が見えてきます。ここから「課題」と「機会」を取り出して、改善点の種をつくります。

  • 課題 :「現象→原因仮説」の形で書きます。たとえば「フォームで離脱が起きている(現象)→入力項目が多く面倒に感じている(原因仮説)」のように、観察された事実と、その理由の仮説を分けて書くのがコツです。
  • 機会 :顧客の期待と実際のギャップや、取り除けそうな摩擦から見つけます。「期待していた情報がすぐ見つかれば、検討がもっと進むはず」といった形です。

事実の背景にある「なぜ」を掘り下げるには、デスケルメソッドカードの INSIGHT -理由分解- が役立ちます。表面的な現象でとめず、「なぜそれが起きるのか」を繰り返し問い直すことで、施策に直結する本質的な原因に近づけます。

課題→機会→施策仮説のテンプレート。サービスページと申し込みフォームを例に、観察された課題(現象)・原因の仮説・機会(あるべき状態)・施策仮説を整理した表

この段階で「これができていればOK」 :少なくとも1つ、「現象→原因仮説→機会→施策仮説」が一行でつながった項目ができていれば次に進めます。


マップ化して共有する(合意形成のための整形)

ここまでで中身は揃っています。最後に、関係者に見てもらい合意を取るために、体裁を整えてマップの形にします。

整形では、列の設計(フェーズ/接点/行動/感情/課題/機会など)を決め、前提条件(対象ペルソナ・期間)を欄外に明記し、読み手が誤解しないように注釈を添えます。マップの具体的な列の埋め方やフォーマットは カスタマージャーニーマップ で詳しく解説しているので、そちらを参照しながら整えてください。

共有のときは、誰を巻き込むかが重要です。マーケティング・営業・CS・開発など、接点に関わる部門のメンバーにレビューしてもらうと、現場の実感とのズレを早い段階で見つけられます。あわせて、なぜその課題・施策にしたのかという判断の背景を記録に残しておくと、後から振り返れる資産になります。議論のプロセスや決定事項を「思考の足跡」として残すデスケルメソッドカードの LOG -痕跡保存- が役立ちます。

この段階で「これができていればOK」 :前提が明記され、関係部門の誰かにレビューしてもらえる状態のマップが1枚できていれば完成です。


次の一歩(分析・改善へ)

1枚つくれたら、次はどこから手をつけるかを決めます。着手点を選ぶときは、感情が大きく下がっている箇所(感情の谷)や、流れが途切れている離脱点に注目すると優先順位をつけやすくなります。

改善の効果を測るときは、離脱率やCVR、問い合わせ件数、NPSといった指標と、ジャーニー上のどの接点が対応するかを結びつけて見ていきます。具体的な分析の手順や、指標の置き方・改善サイクルの回し方は カスタマージャーニー分析 で詳しく解説しています。

大切なのは、マップを一度つくって終わりにしないことです。たとえば 放送文化基金の事例 では、サイト公開後も月に一回の定例の場を設け、改善したい点のヒアリングや課題の共有を続けることで、運用しながら体験を整え続けています。カスタマージャーニーも同じように、レビューと改善を定期的に繰り返す前提で運用すると、つくったマップが活き続けます。


FAQ

Q 何人で作るのが良いですか?

A. 1人でも作成できますが、接点に関わる部門(マーケティング・営業・CS・開発など)の数人で一緒につくると、自分だけでは気づかない行動や感情が見えてきます。まずは少人数で粗くつくり、共有のタイミングで関係者に広げる進め方がおすすめです。

Q どこまで細かく書けばよいですか?

A. 最初から細かくする必要はありません。粗くても一周つなげることを優先し、改善したい接点が見えてきたら、その箇所だけ深掘りしていくと効率的です。細かさは目的(何を判断したいか)に合わせて調整します。

Q データがない場合はどうすればよいですか?

A. データが揃っていなくても、まずは仮説でつくって構いません。社内の知見やヒアリング、行動観察といった定性的な情報から始め、後からアクセスログなどの定量データで裏づけ・修正していけば十分に機能します。


まとめ

カスタマージャーニー作成の最小手順は、次の流れです。

  1. スコープと目的を決める (何を・いつ・なぜ見るか)
  2. 前提を揃える (誰の・どのシナリオか)
  3. フェーズを分解する (顧客の流れを切る)
  4. 接点・行動・感情を書き出す (まずは仮で)
  5. 課題と機会を抽出する (改善点の種をつくる)
  6. マップ化して共有する (合意形成のために整える)

まずは1枚、粗くてもよいのでつくりきってみることをおすすめします。全部を一度に仕上げようとすると手が止まりますが、一周つくってから精度を上げていけば、チームの中で共通の地図が育っていきます。

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顧客体験の設計やカスタマージャーニーづくりでお悩みの方は、ぜひお気軽にデスケルにご相談ください。

著者情報

村上 由朗

YOSHIAKI MURAKAMI

村上 由朗

Art Director / Designer

グラフィックデザインからコーディングによる実装までを一貫して担当するアートディレクター。コーチングやファシリテーションの知見を活かし、対話を通じて課題を整理しながらプロジェクトを進めます。

提供領域

  • ブランディング
  • UIデザイン
  • フロントエンド