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理論と考察

カスタマージャーニーマップ|顧客体験可視化の実践的手法

カスタマージャーニーマップ|顧客体験可視化の実践的手法

「テンプレートは手元にあるのに、いざチームで集まると項目が埋まらない」「作っただけで満足してしまい、その後の施策に活かされていない」カスタマージャーニーマップの作成において、多くのマーケターやプロダクトマネージャーがこうした壁に直面します。

カスタマージャーニーマップは、利用者・顧客と製品・サービスの出会いから別れを描いた図をつくり、チームで建設的な対話ができるようになることが目的です。「描くこと」が目的ではなく、顧客の痛みを理解し、チームの共通言語にすることに真の価値があります。

本記事では、明日から実務で使える「1枚のマップ」を完成させるための具体的な手順と、運用まで見据えたコツを解説します。


カスタマージャーニーマップとは(何を可視化するのか)

混同されがちですが、「カスタマージャーニー」が顧客行動の概念全体を指すのに対し、それを1枚の絵や表に落とし込んで可視化したツールが「カスタマージャーニーマップ」です。

カスタマージャーニーマップとは

デスケルメソッドカードとは?

デスケルが現場のワークショップで使っている、思考と対話を進めるためのカード集です。リサーチ・発想・合意形成など、プロジェクトの場面ごとに使い分けるツールで、参加者が同じ言葉と手順で議論できるようにします。本記事では、カスタマージャーニーマップの作成・運用で実際に使うカードを順に紹介していきます。
デスケルメソッドカード一覧はこちら

デスケルでは、この目に見えない顧客体験のプロセスを可視化する手法を JOURNEYMAP-体験地図- というメソッドカードで定義しています。バラバラな点として捉えがちなタッチポイントや行動を、1枚の「地図」として構造化することで、チームの共通言語にできるのが最大のメリットです。

マップに描き起こす前段階である「顧客体験の概念全体」について詳しく知りたい方は、親記事のカスタマージャーニーをご覧ください。

可視化すべき主要な要素

マップを構成する基本要素は以下の通りです。

  • フェーズ: 認知、比較検討、購入など体験の区切り
  • タッチポイント(接点): WEBサイト、SNS、店舗、コールセンターなど
  • 行動: 顧客がその時具体的に何をしているか
  • 思考・感情: 行動の裏にある意図や、ポジティブ・ネガティブな心の動き
  • 課題・機会: 現状のボトルネックと、改善のチャンス

作成前に決めること(対象・前提・粒度)

いきなりテンプレートに従って情報を埋め始めるのは挫折の元です。まずは「誰の、どの範囲の体験を描くか」の土台を固めます。

作成前に決めること

スコープと粒度の設定

  • ペルソナの特定: ターゲットが曖昧だと行動や感情がブレたままとなり、可視化したとしても信頼できるデータとはなり得ません。具体的な人物像が固まっていない場合は、最初にペルソナを定義しましょう。
  • 範囲(スタートとゴール): 「広告を見てから購入まで」なのか、「検討から解約まで」なのか、顧客の体験のスタート地点とゴール地点を定義します。
  • フェーズの細かさ: スコープと範囲を定義したら、次にそれらを細かく区切ってフェーズを設定します。初めて作成する場合は、5〜7ステップ程度に絞るのが定石です。

事前準備のチェックリスト

作成をスムーズに進めるために、参考データを揃えておきましょう。

参考データ集めに使えるメソッド

デスケルメソッドカード:DESKTOP RESEARCH -二次情報-

デスケルメソッドカード:INTERVIEW & ENQUETE -質問調査-


テンプレートと埋め方のコツ

いよいよマップを作成します。以下の表は、実務で使い勝手の良い基本構成です。

カスタマージャーニーマップ・テンプレート(記入例)

埋め方の順番(入力→判断→出力)

  1. 接点と行動を埋める: 顧客が「どこで」「何をしたか」という事実を左から順に入力します。
  2. 感情を類推する: その行動の際、顧客はどう感じているかを判断します。特に「期待が裏切られた瞬間」に注目してください。
  3. 課題と機会を出力する: 負の感情がある場所に「課題」を置き、それを解決する打ち手を「機会」として出力します。

「主観」を避けるためのメソッド

「こう思っているはずだ」という思い込みを防ぐには、OBSERVATION-行動観察- が有効です。ログデータやインタビューの声を横に置きながら埋めることで、リアリティのあるマップになります。また、VISUALIZATION-図解作成- の意識を持ち、一目で「どこが谷(ネガティブ)か」がわかるよう、グラフやアイコンを活用しましょう。


レビューと更新(作りっぱなしにしない運用)

マップは完成した瞬間から古くなります。チームで合意形成し、改善に活かすための運用ルールを決めましょう。

レビューの観点

  • 感情の断絶: フェーズ間で感情が急激に落ち込んでいる箇所はないか?
  • 部門間の壁: タッチポイントが変わる際、顧客にストレスを与えていないか?
  • 情報の鮮度: INTERVIEW & ENQUETE -質問調査- の観点から、最新の顧客行動と乖離していないかを確認します。

更新のタイミング

CJMの更新にはコストがかかりますが、以下のトリガーで定期的に見直すのが理想です。

  • 施策実施後: 新機能リリースやキャンペーン後に顧客行動が変わったとき。
  • 指標の変化: CVRや離脱率に大きな変動があったとき。
  • 半年〜1年: 市場環境の変化に合わせる定例見直し。

FAQ

Q フェーズはいくつが適切ですか?

A. 一般的には5〜7個です。フェーズが多すぎると全体の流れが見えにくくなり、少なすぎると具体的な改善点が見つかりません。

Q BtoBでも使えますか?

A. はい。ただしBtoBでは「担当者」と「決裁者」でジャーニーが異なるため、ペルソナごとに分けるか、並列で描く工夫が必要です。

Q 感情はどうやって書けばいいですか?

A. 「嬉しい」「不安」などの言葉に加え、折れ線グラフ(感情曲線)を併記すると、体験の盛り上がりと落ち込みが直感的に伝わります。


まとめ

カスタマージャーニーマップは、顧客の靴を履いてその歩みを追体験するための道具です。

  1. 前提を絞る (誰の、どの範囲か)
  2. 事実から埋める (行動、接点、ログ)
  3. 課題を見つける (感情の谷に注目する)
  4. 定期的に見直す (作っただけで終わりにしない)

完璧を目指す必要はありません。まずはホワイトボードや付箋を使い、チームで自由度の高い状態のまま、明日から1枚描いてみることから始めてみてください。


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著者情報

村上 由朗

YOSHIAKI MURAKAMI

村上 由朗

Art Director / Designer

グラフィックデザインからコーディングによる実装までを一貫して担当するアートディレクター。コーチングやファシリテーションの知見を活かし、対話を通じて課題を整理しながらプロジェクトを進めます。

提供領域

  • ブランディング
  • UIデザイン
  • フロントエンド