ペルソナとは何か?ブランディングに活かす顧客理解の基本知識
目次
「ターゲットはIT部門の責任者。効率化を重視する人物像でいきましょう」。
プロジェクトのキックオフでは、こうしたペルソナ設定がスムーズに合意されることがよくあります。
一見、チームの足並みが揃ったかのように見える瞬間です。
しかし、当初はスムーズに合意したはずのペルソナが、いざUI設計や制作の段階になると機能しなくなることがあります。
「もっと情報を網羅すべきだ」「いや、シンプルにすべきだ」と、メンバーそれぞれの主観による「正解」がぶつかり始めるのです。
なぜ、合意したはずのペルソナが機能しないのでしょうか。それは、定義が表面的な属性に留まり、顧客の「切実な動機」や「意思決定を阻害する要因」まで踏み込めていないからです。議論の紛糾は、ペルソナが「判断の拠り所」になっていない証拠でもあります。
デスケルが考えるペルソナの本質は、単なる人物プロフィールではありません。
それは、「顧客の行動パターンと価値観を集約した、チームの意思決定基準」 です。

なぜ、ペルソナが形骸化してしまうのか。そして、どうすれば「使えるペルソナ」として、ブランド体験やUI/UXの設計に落とし込めるのか。
様々なブランド伴走支援を行ってきたデスケルの知見から、作り方と活用法を解説します。
ペルソナとは?定義とターゲットとの違い
「そもそもターゲットと何が違うのですか?」
これは現場でよく聞かれる質問です。特に、数値目標を追う営業部門と、ブランドを考えるマーケティング・デザイン部門の間で、この認識がズレていることがよくあります。
これは以下のように定義を使い分けるとわかりやすいです。
- ターゲット(市場):「誰に売るか」という市場の範囲(集団)。
→ 目的:市場規模の把握、メディア選定、予算配分 - ペルソナ(人格):「その人はどう動くか」という個の心理と行動パターン。
→ 目的:メッセージ開発、UI/UX設計、社内の合意形成

ペルソナとターゲットの違いについては、「ペルソナとターゲットの違い」の記事もご参照ください。
組織の「共通言語」としての役割
ペルソナが真価を発揮するのは、「判断に迷ったとき」 です。
例えば、新しいアプリの機能について「多機能にすべきか、シンプルにすべきか」で意見が割れた際、「部長は多機能がいいと言っている」という政治的な理由ではなく、「ペルソナのAさんは、忙しい移動中に片手で操作したいはずだから、機能は削ぎ落とそう」と、顧客視点で判断できること。
これこそが、ペルソナを導入する最大のメリットであり、私たちデスケルが伴走支援の中でも大切にしている「合意形成」の土台です。
よくあるご相談として採用におけるペルソナに関するお悩みがあります。理想の人材スペックになってしまい実態と離れてしまうというものです。採用のペルソナに特化したお話は「採用におけるペルソナの作り方と活用|候補者体験と求人要件への落とし込み」で解説しておりますので、ご興味のある方はご参照ください。
ペルソナの作り方:事実に基づき「コンテキスト」を理解する
「ペルソナを作ろうにも、どこから手をつけていいかわからない」
「想像で作ってしまい、実際の顧客とズレてしまった」
これらは、ペルソナ作成においてよくあるパターンです。
私たちデスケルでは、思い込みによる作成を防ぐため客観的な事実に基づいて情報を整理し、工程によっては 「デスケルメソッドカード」 も使い、形作っていきます。
「デスケルメソッドカード」
デザインプロセスを共有するために生まれたメソッドカード。「デザインおばけ」がメソッドを言葉と絵で分かりやすく解説する、デスケルオリジナルのツール。
ペルソナ作成の流れと利用できるメソッド

- # INTERVIEW & ENQUETE(質問調査) / # DESKTOP RESEARCH(二次情報) 定量・定性調査:外部データと生の声を収集する。
- # CLUSTERING(情報分類) 情報の構造化:バラバラの情報を分類し、意味を抽出する。
- # INSIGHT(理由分解) / # STORY(物語作成) 人格化(肉付け):データの背後にある心理を探り、物語にする。
- # IMPACT & FEASIBILITY(発想評価) 妥当性の検証:その人格が施策に有効か評価する。
ペルソナ作成において最も重要なのは、単にアウトプットを出すことではなく、「なぜその行動をとるのか」という背景(コンテキスト)をチーム全員で深く理解するプロセス にあります。
例えば、カシオ計算機株式会社様の新規事業開発プロジェクトでは、未来のコミュニケーションを構想するために、徹底したワークショップを行いました。
ここでは、社内の様々な部門(戦略、企画、デザイン)の皆様と一緒に「ユーザーの未来の体験」を具体化していくプロセスを経ています。このように、「作る過程」に関係者を巻き込むことが、その後の納得感と活用度を大きく左右します。
参考事例:
カシオ計算機株式会社 様
未来のコミュニケーションのデザイン開発支援
ペルソナシートの構成:チームの意思決定を支える「羅針盤」
調査や分析を経て導き出された「象徴的なユーザー像」を、チーム全員がいつでも参照できるように一枚のドキュメントにまとめたもの、それが 「ペルソナシート」 です。
これは単なるプロフィール帳ではありません。迷ったときに立ち返る 「プロジェクトの羅針盤」であり、全員が同じ人物を思い浮かべるための「共通言語」 となるものです。
では、実務で機能するペルソナシートには、どのような項目が必要なのでしょうか? 埋めることが目的の形骸化したシートにならないよう、以下の4つのポイントを起点に構成していくことをお勧めします。

ペルソナシートの例
- 基本属性:物語の背景として必要な範囲で。
- 現状の行動と課題:今どうやって課題を解決しているか、何に困っているか。
- ゴールと動機:最終的にどうなりたいか、その裏にある感情的な動機。
- 阻害要因:購入や利用をためらう理由、不安要素。
項目を埋めることが目的ではありません。「このシートを見れば、チーム全員が迷わず判断できるか」 を常に意識して作成しましょう。
ペルソナシートの作り方と活用方法については「ペルソナシートの作り方と活用方法|チームの「合意」をつくる実践テンプレート」の記事もご参照ください。
UI/UX設計への実装:理念を「体験」に翻訳する
ここは、私たちデザイン会社としての腕の見せ所でもあります。
ペルソナは、「マーケティング資料」で終わらせてはいけません。プロダクトの形(UI)や体験(UX)に変換されて初めて価値を持ちます。
UI設計での活用例:迷いをなくすナビゲーション
ペルソナの行動特性を理解することで、機能の優先順位(情報設計)が明確になります。
株式会社リコー様の「RICOH Chatbot Service」の事例では、単に綺麗な画面を作るのではなく、サービスの成長に合わせて機能を追加・改善していくための「デザインシステム・ガイドライン」を構築しました。
「ユーザーがどこで迷うか」「何を求めているか」という視点を中心に据えることで、開発チーム全体が迷いなく改善を続けられる土台を作ることができます。
参考事例:
株式会社リコー 様
企業の問い合わせ対応をサポートする自動応答サービスのUI/UX / デザインシステム構築
「デザインシステム」
デジタルプロダクトのUI/UXにおいて一貫性を保ち、開発効率を向上させるための共通ルール、コンポーネント、思想」などを包括的に体系化した仕組みです。
例:「デジタル庁デザインシステム」「Material Design(google)」「Human Interface Guidelines(apple)」
デスケルにおいてもさまざまなプロダクト・サービスでデザインシステムの構築を提案してきました。
画像はデザインコンポーネントをまとめたガイドラインの一例です。
出典:株式会社リコー 様
オンライン会議をテキスト、音声、画面キャプチャで丸ごと記録するクラウドサービス「toruno」UI/UX開発支援
UI設計におけるペルソナ活用法については、「UI設計におけるペルソナ活用法|情報設計と優先順位の決め方」の記事で詳しく紹介しております。
運用と合意形成:顧客視点を組織の文化にする
ペルソナ作成のゴールは、綺麗な資料を作ることではありません。
「現場で使われ続け、更新され続けること」 です。
「顧客視点」を組織の文化にする
ペルソナを浸透させるには、ツールを作るだけでなく、社員一人ひとりの「マインドセット」を変えていくアプローチも有効です。
損害保険ジャパン様の事例では、日常の光景から背景を読み解く「観察ワークショップ」を実施しました。これはペルソナを考える上でのベースとなる、事実の裏側にある物語を想像する力を養うもので、ユーザーの真の心理を理解する力に繋がります。チーム全員で観察と対話を重ねるプロセスこそが、形だけの運用を超え、組織を顧客中心に変える確かな納得感を生み出します。
参考事例:
損害保険ジャパン株式会社(関西総務部) 様
損保ジャパン社員に向けて「妄想力を高める観察ワークショップ」を実施
ペルソナは「生き物」である
市場も顧客も変化します。ペルソナは一度作ったら終わりではなく、成長させるものです。
定期的なレビューや、ブランドのフェーズに合わせた見直しを行い、常に「今の顧客」を捉え続ける努力が必要です。
まとめ
ペルソナとは、組織が顧客に向き合うための「共通言語」であり、迷ったときに立ち返る「判断基準」 です。
もし、社内で「顧客像」の認識がズレていると感じたり、施策がなんとなく顧客に響いていないと感じたりするなら、まずは小さなワークショップからペルソナを見直してみてはいかがでしょうか。
私たちデスケルは、単なる制作代行ではなく、貴社のチームが「顧客視点」を取り戻し、自走できるようになるための伴走支援を行っています。