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ペルソナシートの作り方と活用方法|チームの「合意」をつくる実践テンプレート

ペルソナシートの作り方と活用方法|チームの「合意」をつくる実践テンプレート

たとえば、プロジェクトの現場でこんな状況に陥ることはないでしょうか。

「ペルソナシートの項目を埋める作業そのものが、目的になってしまった」 「苦労して作った詳細なプロフィールが、結局誰にも見返されていない」

そもそもペルソナシートとは、サービスの典型的なユーザー像の属性や価値観を具体化し、どのような人物に向けて施策を打つのかをチーム内で共有するための資料のことです。

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しかし、作成すること自体がゴールになり、「作って終わり」になってしまうケースが見受けられます。

そういった場合、「正解」を作ろうとしすぎて、「合意」を作るプロセスが置き去りになっている 可能性があります。

完璧なユーザーの履歴書を作ることよりも、チーム全員が「私たちのユーザーは、今こういう状況にいるよね」と 指差し確認できる「共通言語」 を持つこと。それこそが、ペルソナシートを最大限に活用するポイントではないでしょうか。

本記事では、デスケルメソッドカードの視点を取り入れながら、チームの意思決定をスムーズにする「生きたペルソナシート」の作り方をご紹介します。

デスケルメソッドカード
デザインプロセスを共有するために生まれたメソッドカード。「デザインおばけ」がメソッドを言葉と絵で分かりやすく解説する、デスケルオリジナルのツール。


ペルソナシートへの記述項目

「項目が多すぎて、何を書けばいいかわからない」 これは、ペルソナシート作成で最も多い悩みです。

テンプレートにある項目をすべて埋める必要はありません。
デスケルメソッドカードから引用するなら CONCEPT SHEET -意図記述- の手法を使って、本当に必要な情報だけを言語化していきましょう。これは、企画の狙いや論理構造を「1枚の紙」に凝縮し、他者と共有しやすくする ためのメソッドです。

「その情報があることで、デザインや意思決定が変わるか?」という基準で情報を研ぎ澄まし、チームがパッと見て理解できる状態(=1枚のシート)を目指します。

A:「休日の趣味も書いた方が、人となりが見えて良いですよね?」
B:「その趣味の情報によって、今回開発する業務システムの機能は変わりますか?」
A:「……確かに、機能には影響しないですね」
B:「では、今回は思い切って削ぎ落としましょう。代わりに『月末の業務で感じているプレッシャー』を深掘りしませんか?」

…といったようなやりとりをチーム内で重ね、情報を削ぎ落とし、全員で記憶できるサイズにすることが重要です。

参考に意思決定のための、「ペルソナシート記述判断ガイド」を掲載します。

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ポイント:
各項目には、インタビューで得た実際の言葉(定性) と、アンケート等の数値(定量) をセットで記載できると、チーム内の「納得感」を高める接着剤になります。


ペルソナシート作成プロセスと「伴走・実務」のコツ

「情報収集から完成まで何ヶ月もかかってしまう」
完璧主義は、プロジェクトのスピードを殺してしまいます。まずは「仮説ペルソナ」をクイックに作るのがおすすめです。
最初から100点を目指すのではなく、運用しながら育てていきましょう。

プロセスの可視化

作成プロセスでは、以下の観点に沿って手元にある断片的な情報を整理し、可視化していくとスムーズです。

  1. 集める(COLLECT):
    営業担当者の肌感覚、ログデータ、既存のアンケート。これらを付箋に書き出し、壁に貼り出します。
  2. 分ける(COMPREHEND):
    「この悩み、あのユーザーとも共通しているね」とチームで対話しながら、似たものをグルーピングします。
  3. 想い描く(CONCEPTUALIZE):
    グループ化された情報から、一人のユーザー像を浮かび上がらせます。

「伴走・実務」のコツ:プロセスを壁に貼る

「なぜそのペルソナになったのか?」がブラックボックス化すると、後からチームの合意が崩れやすくなります。 これを防ぐメソッドが、DATA WALL -情報壁面- です。

調査データ、インタビューのメモ、議論に使った付箋など、すべてのプロセスを物理的(またはオンラインホワイトボード上)な「壁」に掲示し続けること。 「あの時のインタビューで、Aさんがこう言ってたよね」と、いつでもチーム全員が指差し確認できる状態を作ることこそが、迷走を防ぐ一番の近道です。

【事例】一枚の写真から「顧客」を妄想する

マニュライフ生命保険株式会社様のプロジェクトでは、デスケルメソッドカードの OBSERVATION -行動観察- を活用し、顧客理解を深めるワークショップを実施しました。
参加者は、ある人物の「部屋の写真」だけを見て、「この人はどんな性格?」「普段どんな生活を送っている?」を徹底的に妄想(推測)します。
言葉(言語情報)だけでなく、部屋の小物や配置といった「非言語情報」からペルソナの輪郭を描き出すことで、固定化していた業務の視点を解きほぐし、「顧客中心」の感覚を養いました。
このように、数字や文字だけでなく「ビジュアルから想像を広げる」アプローチも、リアリティのあるペルソナ作りには非常に有効です。


カスタマージャーニーマップへの接続:設計・機能・体験

ペルソナシートは、壁に飾るためのものではありません。
JOURNEY MAP -体験地図- のメソッドや要件定義へと接続し、具体的なアクションに変換してこそ価値があります。

「阻害要因」を「機能」へ変換する

例えば、ペルソナの「阻害要因」に 「送料が確定するまで総額がわからず不安」 という記述があったとします。
ここから、デザインの意思決定を導き出します。

  • 課題: 決済直前まで送料が表示されない仕様
  • 対策: 郵便番号を入力した時点で送料概算を出し、カートに常時合計金額を表示するUIに変更
  • 結果: 「不安」という阻害要因が解消され、カゴ落ち率が改善

このように、「ペルソナが抱えるXXという不安を消すために、YYという機能を実装する」という論理構成を作ることが、デザイナーとPMの 合意形成 につながります。


継続運用のコツ:更新の「儀式」をつくる

「最初は使っていたけど、だんだん見なくなった」
これを防ぐには、精神論ではなく 「仕組み」 が必要です。
具体的には、事業計画・目標設定(OKRなど)のタイミングで、「ペルソナのアップデート」 を行うのが効果的です。

  • この3ヶ月で、ユーザーの行動に変化はなかった?
  • 新しい競合サービスの登場で、期待価値が変わっていない?

この問いを投げかけ、シートを更新します。
また、チャットツールの概要欄にリンクを貼ったり、会議室にポスターとして掲示したりして、「物理的に目に入る回数」を増やすことも有効です。


まとめ

ペルソナシート作りで大切なのは、以下の3点です。

  1. 単純化: 意思決定に必要な「痛み」と「動機」に絞る
  2. 可視化: 言葉だけでなく図や写真でイメージを共有する
  3. 更新: 作って終わりにせず、チームの変化に合わせて育てる

私たちデスケルは、デザインを 「一部の専門家のもの」から「みんなの力」 として活用することを目指しています。
ペルソナシートは、そのための強力なツールです。
まずはテンプレートを使って、現時点での「私たちの仮説」を書き出すことから始めてみてください。
そこから、チームの新しい対話が始まります。

この記事では、ペルソナシートの作り方と活用方法を解説しました。ペルソナ全体について詳しく知りたい方は「ペルソナとは何か?ブランディングに活かす顧客理解の基本知識」をご参照ください。

著者情報

谷津 吉宣

YOSHINORI YATSU

谷津 吉宣

Designer

多摩美術大学卒。ブランディングからフロントエンド領域まで横断するデザイナー。行政のwebから大手企業のUIまで、「使い心地」と「実装のしやすさ」を両立させる設計を得意とします。

提供領域

  • UIデザイン
  • webデザイン
  • ブランディング
  • フロントエンドエンジニアリング