全天球カメラ「RICOH THETA」の魅力を最大限に体験するためのUI/UXデザイン

全天球カメラ「RICOH THETA」の魅力を最大限に体験するためのUI/UXデザイン

株式会社リコー

RICOH THETA(リコー シータ)は、株式会社リコーが開発・販売する360度カメラです。

このプロダクトは、本体の表裏2枚の超広角レンズが上下左右をぐるっと一度に撮影し合成することで、360度の画像・映像を簡単に作成できます。

さらにWi-FiやBluetoothに対応しており、スマートフォンやタブレットと接続して、撮影した画像・映像を即座に共有することができます。またGPS情報を記録できるため、Googleストリートビューにも簡単にアップロードすることができます。

活用シーンは、個人用途だけでなく様々なビジネス用途に活用されています。例えば、不動産や建築現場などで物件内部の撮影に利用したり、観光地やイベント会場のパノラマ写真や動画を撮影したり、VRコンテンツの制作など幅広く利用されています。

弊社では初期開発段階からUI/UXデザインの開発支援を行いました。

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課題背景

今までの撮影体験とは全く違ったUX検討の必要性

デジカメやスマートフォンの普及により、カメラのニーズが大きく変化している状況でした。そのため株式会社リコーでは、これからのニーズを満たす新しいカメラの開発を検討していました。その中で「全天球カメラ(360度カメラ)」という未来のカメラを発想し、開発が始まりました。

今までにないカメラの開発には、今までの撮影体験とは全く違ったUX検討とそれを実現するUIが必要でした。そこで、弊社のUIデザイナーが株式会社リコーのプロジェクトチームに伴走しながら、UI/UXデザインを支援することになりました。

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プロセス

未知の領域のUXを、プロトタイピングによってチームで検討する

360度カメラでの撮影という体験は事例が少なく、プロジェクトチームやユーザーにとって未知の領域でした。
未知の領域のUXを検討するにあたり、ユーザーが主要機能をつまづかずに使えるようなユーザービリティが重要視されました。

そこでこのプロジェクトでは、まず紙とペンを使ってアプリケーションの画面を簡易的に書き起こし、必要な機能や各要素のレイアウトなどを素早く検討する「ペーパープロトタイピング」を行いました。

ペーパープロトタイピングは、専門的なデザインツールではなく誰でも使える紙とペンを使うことで、チームメンバー全員がデザイン検討に参加できるプロトタイピングの手法です。
この手法を行う中で、構想段階のUIに対して、目指す体験に近づけるための改善点などを洗い出し、ユーザビリティを高めていきました。

次に、ペーパープロトタイピングで検討した大まかなレイアウトに基づいて、より具体的な画面の構成、ユーザーの操作方法、アプリケーションの動作などをワイヤーフレームとしてまとめました。

最後に、UIデザインとして色彩、アイコン、フォントなどを設計し、アプリケーションの画面をデザインしていきました。

アプリのリリース後も継続的にUI/UXデザインを支援

アプリをリリースしてからも、ユーザーからのフィードバックを反映したり新規機能の追加などに伴い、どのような操作フローが最適か、ハードウェアとの連携をどのように考えるかなど検討すべき点が数多く発生します。

それらを検討する際に、言葉だけの説明では、仕様の抜け漏れが生じたりイメージがズレたりすることも少なくありません。

そこで、実際の画面や遷移図を視覚的に共有したり、その場でプロトタイプを作りながら話すことで、仕様の抜け漏れやイメージのズレを防ぎ、質の高い意思決定ができるように支援しました。

さらに、ユーザー視点でより使いやすく、直感的に操作できるよう、操作性や可読性に配慮したUI要素の配置や配色、アイコンのデザインなど、細部にわたるデザインの調整も適宜行っていきました。

このように、リリース後も新規機能のUX検討を支援したり、ユーザー視点でUIデザインを改善していくことで、より使いやすく価値のあるアプリケーションの提供を支援しました。

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アウトプット

RICOH THETAの魅力を最大限に体験できるUI

RICOH THETAのハードウェアとスマートフォンの連携や、撮った写真をすぐに確認できるような動線設計、360度画像・映像をぐりぐりと動かせる体験など、今までになかったUXを考慮したデザインにより、このプロダクトの魅力をすぐに感じ取れるようなUIデザインとなりました。

特にハードウェアとの連携部分は、複雑になりがちな部分は手順を簡略化し、シンプルに連携ができるようにデザインしました。

また、360度カメラという今までにないUI/UXのデザインであっても、なるべく見慣れて馴染みのある慣習的なデザインにすることが必要です。そのために、OSごとにデザインを分け、iOS版ではHuman Interface Guidelines、Android版ではMaterial Design Guidelinesに則ってデザインすることで、ユーザーにとって直感的に使いやすく、無駄な開発コストも発生させないようにしました。

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成果

デザイン性や機能性が優れた製品として複数のアワードを受賞

手軽な操作性による普及促進

RICOH THETAは、シンプルで直感的な操作性を追求しており、初心者でも簡単に360度画像・映像を撮影できるようになっています。このことが、360度カメラの普及につながり、多くの人が手軽に360度画像・映像を制作することができるようになりました。

スマートフォンとの連携による利便性向上

RICOH THETAは、スマートフォンやタブレットと接続して、撮影し画像・映像を即座に共有することができます。UXデザインの観点から、ハードウェアとの連携手順をなるべく簡略化したことで、360度画像・映像をシェアして楽しむ体験の質を高めました。

撮影後の編集や加工による表現力向上

RICOH THETAは、360度画像・映像の編集や加工にも対応しており、シンプルな操作でトリミングやフィルターの適用などを行うことができます。これにより、ユーザーはより表現力豊かな360度画像・映像を制作することができるようになりました。

様々なデザインアワードで受賞

RICOH THETAは、新しい製品がリリースされるたびに、そのデザイン性の高さや機能性の優れた点が高く評価され、グッドデザイン賞やiF DESIGN AWARDなど様々なアワードで受賞しています。

これらの受賞により、RICOH THETAがデザイン性や機能性の面で優れた製品である、ということが認められました。

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用いたデザインメソッド

VISION & MISSION -目的共有-

REAL EXPERIENCE -現実体験-

DEFINE KEYWORD -言葉定義-

CLUSTERING -情報分類-

INSIGHT -理由分解-

PROTOTYPING -試作体験-

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チーム

  • Client
    株式会社リコー
  • UX Design
    平野 友規(DSCL Inc.)、 白砂 貴行(DSCL Inc.)
  • UI Design
    白砂 貴行(DSCL Inc.)


(チームメンバーの役職などについては、プロジェクト当時のものです。)