『株式会社メガハウス』のオリジナルブランド「デスクトップアーミー(以下DTA)」は可愛らしい造形と高い可動性を兼ね備えた可動フィギュアのシリーズです。
各フィギュアは約80mmのコンパクトなサイズでありながら、関節がしっかりと可動し、様々なポーズを取ることができます。また、付属の武器やアクセサリーを装備させることで、個性豊かなキャラクターを自分好みにカスタマイズすることも可能です。
「DTA」は「デスクトップアーミーEX」や「デスクトップアーミーNFT」など、派生シリーズやテーマを展開しており、多様なキャラクターがラインナップされています。それぞれのキャラクターには個別のストーリーやバックグラウンドが設定されており、世界観も含めて楽しめるフィギュア商品として2016年から開発され続けています。
弊社ではブランドの立ち上げ時からロゴ開発、パッケージやイベントパネルなどの各デザインのアートディレクションを一貫して伴走支援しております。
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課題背景
商品の世界観を表現しながら他の玩具ブランドとの差別化を図る
未来世界の「人工知能」の革新により開発された携帯端末「D-Phone」の登場による通信事業界での企業間戦争という世界観のもと、それらをどうビジュアルに落とし込むかというところを考慮したブランド構築が始まりました。
「DTA」は、原作となる漫画や小説が無いオリジナル商品のため、商品ロゴやパッケージなどのツールが、その世界観とファンをつなぐ重要な役割を担っている商品であり、ユーザーに長く継続的に愛される玩具ブランドとするために、しっかりとしたブランディングが必要でした。
そのため、弊社ではブランディングの観点で「商品ロゴ」「キービジュアル」「商品パッケージ」をデザインしました。そこで構築されたVIが各販促物・サイトなどにも活用され、ブランドとして統一したイメージを伝えることに貢献しています。
商品パッケージのデザインは、ブランドを伝えるだけでなく玩具売り場での訴求も考慮する必要があります。そのため、どの商品もパッケージデザインを派手にする傾向がありますが、「DTA」は他の玩具とは違うブランドとして売り場で目に留まるようにデザインしました。
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プロセス
デスクトップアーミーのブランド開発プロセス
1.商品ロゴの開発
企画や商品名が決まっていたのでまずはロゴの開発から取り掛かりました。
開発担当「P・D」氏とのミーティングなどを通じて「DTA」の世界観やコンセプト、先々の展開などを共有し、必要なビジュアルイメージを分析していきました。
実際のデザイン提案時には、「P・D」氏と大まかな方向性を確認したのちに細かい差異のあるデザイン案を提示し、他の媒体や印刷物でも使えるよう、カラースキームや使用感を確認し、最終的なロゴデザインを固めていきました。
2.パッケージやイベントパネルなどで使用するキービジュアルの開発
商品ロゴの開発が進んだところで「DTA」のキービジュアルの開発に取り掛かりました。
キャラクターの可愛らしさやかっこ良さを押し出すために、キャラクターのイラストをメインビジュアルとして置くことが決まっていたので、キャラクターのイラストと、そのイラストの邪魔にならずに世界観を表現するキービジュアルが必要でした。
ここではカラースキームやグラフィック要素を整理・構築し、イベントパネルやSNS画像などの各コミュニケーションツールでも統一的に利用できるキービジュアルの開発を行いました。
3.商品パッケージの開発
商品ロゴとキービジュアルの開発を経て、それらのブランド要素を統合的に組み上げた商品パッケージの開発を行いました。商品ロゴ、商品写真などと共に設定文章などのパッケージに載せる要素を明確にし、ターゲットへの商品イメージや製品情報の伝達の部分を「P・D」氏と共に検討していきました。
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アウトプット
サイバーパンクでディストピアな世界観を、可愛らしいキャラクターと相反しない形でまとめたデザイン
シンプルで展開がしやすいロゴデザイン
商品ロゴは軍であしらわれるストライプ柄を意識した意匠を取り入れ、世界観に合わせてスタイリッシュなデザインで仕上げました。
シリーズ展開時には「VOL.01」のように番号が付与されるため、ブランドロゴの一部がその要素に差し代わるようデザインしました。基本的には単色での利用を想定したデザインですが、ブランドロゴには各キャラ・設定に合わせて一部色を変更できる拡張性を残しました。
商品ロゴだけでなく、世界観に合わせた軍のロゴや数字のデザインなども合わせて構築しました。
「dragoon」でデザインした数字は取り回しの観点で使用はしていませんが、こういった部分も細かくデザインをしていった経緯がありました。
世界観を表現したデジタルグリッチを意識したキービジュアルデザイン
どのビジュアルでも商品ロゴとイラストをメインにあしらうため、世界観を表現するキービジュアルはその2つの引き立て役となるようにデザインしました。
当初からパーツなどの組み換え要素がある商品コンセプトであったため、「組み換えパーツ」の概念を抽象化して構築したランダムパターンを作ってサイバーパンクでディストピアな世界観を表現するために、デジタルグリッチを意識したキービジュアルにデザインしました。
カラースキームは、各キャラクターの色から抽出するレギュレーションにすることで情報量が多くならないようにし、色のまとまりを担保しました。
また、キャラクターの設定データを毎回「P・D」氏が考え、それを飾り文字として入れています。
デジタルグリッチなランダムパターンの中には、メカニカル感を引き立たせる各マークを白抜きで配置することでディティールにメリハリを付けています。
そのマーク1つ1つはデカール(商品に付属する装飾用のシール)としても商品パッケージに封入されている商品もあり、キャラクターを引き立てるアイテムの1つとなっています。
様々なIPとのコラボでも継続的に展開できるパッケージフォーマット
正面はイラスト重視の設計になっており、キービジュアル同様ロゴ・イラスト・バックグラウンドのキービジュアルの要素を置いています。裏面には「P・D」氏が考えたキャラクター設定を入れることでキャラクターに対して感情移入ができるようにしており、どんな商品が入っているのかがわかるように各シリーズでラインナップ写真を入れています。
側面にはキャラクターのアナザーカットを入れてポージングの幅を見せたりと、正面のイラスト、他の商品ではあまり見かけない裏の設定文章など、「パッケージを余すことなく360度見てもらって遊んで欲しい」という「P・D」氏の意図をまとめたパッケージデザインとなっています。
パッケージサイズは当初から本屋など様々な売り場にも「DTA」が広がって欲しいとの想いから、単行本などと似たB6のサイズを意識して設計されています。当初よりパッケージサイズが大きくなった部分もありますが、正面のサイズはずっと変わっていません。
商品展開ではオリジナルキャラクターだけでなく、様々なIPとのコラボや、商品によってはパッケージサイズが変わることもありますが、構築したデザインは崩れずに一貫した商品ブランド訴求ができるパッケージデザインにしました。
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成果
2016年の商品販売開始から継続的にブランディングを支援
2016年の販売以来、「DTA」は、2023年時点でメインの「DTA」シリーズだけで50ラインナップ、そして全シリーズを含めると出荷累計90万個を超える人気可動フィギュアとなりました。
その間、継続的にブランディング支援を行うことで、ファンに長く愛される玩具ブランドを、「P・D」氏と一緒に形作ることができました。
「DTA」7周年の折にプロジェクトをふりかえり、 「P・D」氏からは下記のコメントを頂きました。
様々な要望を満たしてくれたパッケージデザイン
パッケージデザインは商品の顔になるものなので、当然良いデザインで展開をしたいと思っていました。「DTA」のパッケージデザインはそれが満たされており大変満足です。
キャラクター重視の商品企画だったので、それを100%、120%引き立たせてくれるデザインになっていると思います。今後もこのデザインを変えずに、商品自体も長く継続していきたいです。
デザイナー側からも提案をいただくので、能動的に連携しながら進めることができる
ある程度フォーマット化されたパッケージデザインであっても、商品内容によって変更が発生するような時があります。そんな時でもこちらが依頼した内容に対して「こうした方が良くなるのではないか」と提案をしてもらえます。デザインのことはデザイナーから提案してもらった方がうまくいくので、能動的に提案を頂けることがありがたいです。
また、他にもグッズデザインなど多岐に渡る発注についても具体的な依頼を出せることばかりではないので、抽象的なイメージでのオーダーであっても、しっかりと具現化したデザインを上げてもらえるので助かります。
キャラクターを開発してくれるイラストレーターさんはもちろんのこと、関係者みんなで作り上げている商品です。
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用いたデザインメソッド
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チーム
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Client開発担当「P・D」氏(株式会社メガハウス)
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Art Direction日野 祥太郎(DSCL Inc.)
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Design日野 祥太郎(DSCL Inc.)