地域産業振興のためのインキュベーションセンターへのデザイン伴走支援
株式会社さがみはら産業創造センター
『さがみはら創業創造センター』(以下、SIC)は、創業・ベンチャー企業を育成する相模原市西橋本にあるインキュベーションセンターです。
「総合的なインキュベーション活動を通じて地域経済の発展に貢献します。」を企業理念に掲げ1999年に設立し、インキュベーションセンターに入居する創業・ベンチャー企業と地域企業の成長を支援するため、経営サポート事業、人材育成事業、連携・研究開発事業、投資事業、そしてラボ・オフィス賃貸事業を展開しています。
DSCLは、企業の成長支援事業のデザイン分野を担当するとともにSICの運営コンテンツのデザイン開発を15年以上継続し、その企業理念の実現のため共に取り組み、支援しています。
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課題背景
SICのさまざまな活動のうち、大きく分類すると以下の領域で、デザイナーの力を必要としていました。
- 創業・ベンチャー企業及び中小企業の支援
- 地域産業振興の取り組み
- SICの広報活動
そして、SICの理念、目的、方針を理解し、展開する事業づくりをSICのインキュベーションマネージャーと時間をかけて議論することを含め、企画から実施まで、デザイン面から協力支援する必要がありました。
1.創業・ベンチャー企業及び中小企業の支援
SICは創業・ベンチャー企業と新分野進出を目指す地域企業を支援するために、研究開発ラボとオフィスの提供をはじめ、以下のような様々な施策を行っています。
- 販売促進ツールから事業デザインまで、個々の中小企業のニーズに合わせたデザイン支援
- 地域の中小企業を対象とした経営塾、職場リーダー養成塾及び経営力向上セミナーの開催
- 産学官連携推進のためのフォーラムの開催
イベント情報などは、入居者をはじめとした創業・ベンチャー企業に向けてわかりやすく伝える必要があり、ウェブサイトやポスター、イベントロゴ、パンフレット、展示物、社内報など、告知や開催、広報に使用するツールをデザインする必要がありました。
2.地域産業振興の取り組み
SICは、企業理念を実現するため相模原の地域企業や住民とのつながりを大切にしています。
特に、未来を担う子どもたちの育成や地域産業を支える人材の雇用など、SICは地域の皆様とともに地域振興を目指した以下のようなプロジェクトを行っています。
- 入居企業や、地域企業へ向けた情報の発信
- 将来を担う小学生の起業家教育イベントの開催
- 地域の学生と地元企業との就職マッチング
これらプロジェクトの実施にあたって、SICの魅力とイベントのテーマが地域の方々に届くようデザインをする必要がありました。
3.SICの広報活動
SICは、幅広い活動を多くの市民、企業、株主及び支援機関に伝え、より良い事業を展開することを目指しています。
- ウェブサイト
- ビジネスツール(ロゴ、名刺、会社案内、事業案内等)
- イベントツール(ポスター、パンフレット、展示物等)
- 新施設のサイン(館内サイン、屋外サイン、誘導サイン等)
- 創立記念イベント(記念式典、記念誌等)
創業・ベンチャー及び地域企業へ向けた事業周知にあたって、各事業やイベントごとに必要な広報ツールをデザイン面で支援する必要がありました。
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アウトプット
3つの領域を横断したデザイン制作
SICの「創業・ベンチャー企業及び中小企業の支援」「地域産業振興の取り組み」「SICの広報活動」の三つの領域は相互に関わり合い、多様なプロジェクトを展開しています。
DSCLは、2005年から長年にわたり、SICの多様なプロジェクトに企画から参画し、SICの目的達成のため、ともに作り上げる伴走型の支援を行ってきました。
以下、代表的なプロジェクトをいくつかご紹介します。
ウェブサイト制作・運用
SIC公式ウェブサイトには、入居企業向けの育成に関わる定期的なセミナーや企画などの案内が掲載されています。
DSCLは2010年にウェブデザインのリニューアルを支援し、情報構造を整理することとモダンなデザインにすることで、情報にアクセスしやすいウェブサイトを設計しました。
そのほか、既存のテンプレートから外れた個別ページのカスタマイズ制作・更新は2024年時点でもDSCLが請け負っています。ページのデザインだけでなく、細かな機能向上やメンテナンスなども適宜行っています。
SIC発信ニュースペーパー「かわらばん」のデザイン
SICは、入居企業の情報発信とコミュニケーション促進のため、入居企業向け情報誌「SICかわらばん」と、地域企業や関係者向けの情報誌「SICかわらばん -地域版-」を発行しています。
DSCLは、「SICかわらばん」の構成、デザイン面を支援しています。
入居企業向け情報誌「SICかわらばん」
SIC入居企業へ向けた情報誌「SICかわらばん」を毎月発行しています。
表面に入居企業の紹介、裏面に告知を掲載し、A4両面で構成されています。
文字数の目安や記事配置の想像がつきやすいようにテンプレート化を行い、チャットツールを導入するなど、執筆側・デザイン側ともに効率的な制作フローを構築し、適宜アップデートしながら毎号制作しています。
地域向け情報誌「SICかわらばん -地域版-」
地域企業へ向けた情報誌「SICかわらばん -地域版-」は、隔月に、情報をまとめ発行しています。
地域企業の紹介、入居企業の紹介、SICインキュベーターによるコラム、セミナーの告知などを掲載し、A3見開きの形式で構成されています。
DSCLは、創刊からデザインを請け負い、回を重ねるごとに細かく掲載ルールを定め効率化し、アップデートしながら毎号制作しています。
相模原地域の子ども向け起業家教育イベントのデザイン支援
「子どもアントレプレナー体験事業」は、次代の社会を担う小学生を対象に『従来の経験や知識などをもとに作り上げられた固定観念に捉われることなく、初めて出会う仲間と自ら考え出したアイデアで失敗を恐れずに挑戦する気概に溢れた人材』の育成する事業です。
小学生が参加する「子どもアントレプレナー体験キャンプ」と大学生が運営する「アントレ・チャレンジ」の両事業で構成され、小学生の起業家教育を通じ、大学生が成長するプログラムとして開催しています。
DSCLは、告知ポスター・チラシデザイン、ウェブの告知ページデザイン・更新、開催後のイベント中の写真や動向をまとめたメモリアルアルバムのデザインなどでプログラムに参画しています。
また、より良い事業をつくるために「アントレ・チャレンジ」の参加学生へのヒアリングと現役大学生へのヒアリングを行い参加状況を分析しています。さらに、告知ツールの効果測定を分析し、次年度の円滑かつ効果的な事業推進のための改善事項を提案するなど、デザイン以外のアプローチをSICと共に行っています。
SIC新棟増築プロジェクト
2019年、SICは4棟目の施設として研究開発棟を建設しました。
創業時の2000年に相模原市緑区西橋本に「SIC-1」、2002年に隣接地に「SIC-2」、2011年に相模原市中央区上溝に「SIC-3」を建設していました。
そして、研究開発企業の育成のため、新棟として機能性の高いラボを増築するプロジェクトが進められました。
新棟のネーミングをどう設定するか、建物のサイン計画をどう考えるかなどさまざまな課題がありました。要請に応えるため、DSCLは、相模原・町田を拠点に活動するデザイン事務所である『株式会社KOZAKIKAKU』と共同でプロジェクトに当たりました。
SICの各棟のネーミングを提案
「SIC-2」に隣接する新棟は、成長産業の高い技術力を有した研究開発を行う事業者に向けて、拡張性が高く、インフラスペックを高くすることを前提に計画されたものでした。
この特性を捉え、プロジェクトチームでは、各建物に特色あるネーミングを行い、親しみのある副称を定義することを提案しました。
「SIC-2」の新棟の役割から「R&D(Research & Development) Lab.」、それにともない汎用的に使われていた旧棟を「Creation Lab.」とネーミングを定義しました。
建物内のサイン計画
新棟「R&D(Research & Development) Lab.」建設計画では、床材や扉の塗装色の選択から建物看板のデザインまでサイン計画全般に携わりました。合わせて他棟のネーミングに合わせたサイン計画を提案し採用されています。
キッチンラボの総合デザイン
SICは、以前より入居者から要望があった食堂・カフェスペースを新棟内部に併設することを計画しました。
プロジェクトチームは、スペースのコンセプトデザイン、サインやロゴの制作、巨大なのれんを設置するなど機能性とデザイン性に富んだ提案を総合的にプロデュースしました。
入居者が誰でも自由に使えること、希望者はキッチン設備を利用してイベントの企画ができるなど、開かれた環境のイメージを大事に、柔らかかつポップな雰囲気を、ロゴをはじめとするスペース全体に印象付けられるようデザインしました。
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成果
継続して依頼することのメリット
SICとは、2005年に弊社の前身となる「BYSPICE」として継続的な支援を開始し、それから15年以上にわたり、ともに考え、提案し、実現する伴走支援を行い、紹介したプロジェクトを始めさまざまな成果物を共に制作してきました。
当社の伴走支援について、SICスタッフの方のコメントを掲載します。
- 2005年から支援を受けており、相互の考え方、進め方が理解できているため息の合った仕事ができます。
- 様々な要望や事業への思いが理解され、仕事に反映されています。とても信頼できることが最大のメリットだと感じています。
- 求める成果を超える新たな提案があることが大きな魅力です。新たな提案が次の事業を生み出すこともあり、長期にわたる伴走支援の価値だと感じています。
- 長期展望での業務依頼ができ予算に合わせ依頼業務の調整ができています。
- DSCLが進める作業とSIC自らが準備する作業の調整をすることで、円滑で効率的に業務を完了できます。さらに年単位で支援を受けることができるので、戦略的な計画を作ることができ、たいへん助かっています。
など、長年DSCLと協業する中、デザイン会社の伴走支援を選ぶことの良さをコメントいただきました。
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用いたデザインメソッド
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チーム
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Client株式会社さがみはら産業創造センター
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Direction小橋 隆司(DSCL Inc.)、村上 由朗(DSCL Inc.)
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Design小橋 隆司(DSCL Inc.)、谷津 吉宣(DSCL Inc.)、西澤 知恵里(DSCL Inc.)、岩ヶ谷 実咲(DSCL Inc.)
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Front-end Development小橋 隆司(DSCL Inc.)、谷津 吉宣(DSCL Inc.)
(チームメンバーの役職などについては、プロジェクト当時のものです。)