「言われたものをしっかり作る」のその先へ。デザイン思考研修プログラム開発

「言われたものをしっかり作る」のその先へ。デザイン思考研修プログラム開発

多くの企業が、競争激化と急速な市場変化への適応を迫られる中、成長戦略を推進するための新しいアプローチを採用しています。

これらのアプローチの一つに、技術進化や社会的変化に適応して新しい市場領域を開拓し、既存の事業を発展させるチームの設立があります。そういったチームは、デジタルソリューションを活用して事業の付加価値を向上させることをミッションとしています。そのため、メンバーには独自の視点で問題を分析し、アイデアを提供するための抽象的な思考能力が求められます。

弊社では、そのようなチームに向けて、楽しみながらデザイン思考を学ぶ研修を設計・実施しました。この研修では、特に物事を分析して抽象化し、アイデアを構想するプロセスにフォーカスしました。

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課題背景

こういったチームは、機能設計や実装をするなどの具体的なタスクに対処する能力に長けている一方で、新たなサービスの方向性を検討したり、要望の背景にある真の意図を理解するなどの抽象的な思考に苦労することがあります。

そこで、この研修では「言われたものをしっかり作る」だけでなく「顧客が本当にほしいものをしっかり作る」ができるチームを目指し、各メンバーが創造性を発揮しながら「抽象の領域」で思考するためのプロセスやマインドを伝える方針にしました。

プロセス

創造性を発揮しながら抽象的な思考を体験できるワークショッププログラムを設計し、成長推進チームに向けて3ヶ月にわたり実施しました。プログラムの中で、創造性を発揮できるよう注力したポイントは、主に以下の3点です。

1. 抽象的な思考「分ける」「想い描く」のプロセスを体験する

今回の研修では、Design School Koldingの6Cモデルの中の「分ける」「想い描く」を中心にデザイン思考のプロセスを体験できるように設計しました。

  • 「分ける」…グルーピングや理由の深掘りなどによってパターン・傾向・特徴を見つけていくプロセス
  • 「想い描く」…頭の中にあるアイデアや仮説を図や言葉にすることで、そのアイデアの持つ意味を明らかにするプロセス

研修の中で、世の中にあるサービスの具体的な機能やユーザー視点での印象を分類して特徴を見つけ、それが顧客の課題解決にどのように繋がっているのかを分析し、自分たちのサービスに応用するアイデアを構想する全3回のワークを行いました。

2. デザイナーの創造的な振る舞いを観察できる環境に

創造性を発揮するためのマインドは、文字やイラストでコツを伝えただけでは、なかなか真似できないものです。

そこで、今回は各グループに弊社のデザイナーが参加し一緒にワークに取り組みました。そうすることで、参加者はデザイナーの振る舞いを自分の目で観察し、その振る舞いによってプロセスが進めやすくなる様子を体験できるようにしました。

デザイナーごとに個性は異なりますが、DSCLのデザイナーは普段から「クライアントと一緒にやる」を大事にしているため、社外の方との議論を図で整理したり、生煮えのアイデアでも言ってみるなどの振る舞いを得意としています。

こうしたデザイナーと一緒にワークに取り組むことで、言葉だけでは表しきれないデザイナーの暗黙知を学べる環境を作りました。

3. デザイナーが内省をサポートする、質問・気づきのシェア会

研修の数時間は、参加者の方々は内容を吸収することに集中するため、質問や気付きがパッと浮かびづらいこともあります。

そこで、研修とは別日に「正直こうだよね。」「ここはこういう解釈で合ってる?」「具体的なプロジェクトではこうしてるよ。」というようなコメントを、DSCLのデザイナーを含めた少人数のグループでシェアする会をオンラインで設けることにしました。

研修での自分の体験を咀嚼し、改めて質問や気づきを投げかけられる場を作ることで、参加者の方々の内省をサポートしました。

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アウトプット

研修に使用したスライド資料に加えて、研修の様子を撮影し各回3分程度にまとめた動画をお渡ししました。

ワークの流れはもちろん、参加者の方々の様子や発言をまとめた動画は、当日の熱量や楽しい雰囲気を臨場感を持って振り返れるようなものになっています。

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成果

創造性を発揮するためのプロセスやマインドを体験できる場に

研修後の振り返りにて、参加者の方々から下記のようなコメントをいただきました。

  • もし1日目に、3日目の課題を出されたら手も足も出なかったと思う。でも、この研修を通じてチームでの議論を進める中で、次にどのような話に持っていかないといけないかが、頭の片隅に浮かぶようになってきたと思う。
  • 類似の事例を参考にすることはやってきたが、あえて遠い事例からもヒントを得てみようという視点はとても新鮮だった。
  • 今までは、出された課題に対していかに正解となることを言えるかを考えていましたが、そうじゃないんだと。正解を言うことも大事ですが、こういったアイデアを考える場では生煮えのことを言ってみることも大事なんとだ気づきました。

このように、全3回の研修や内省サポートを通して、デザイン思考の具体的なプロセスだけでなく、創造性を発揮するために大事なマインドも体験していただくことができました。

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用いたデザインメソッド

DATA WALL -情報壁面-

VISUALIZATION -図解作成-

DESKTOP RESEARCH -二次情報-

DEFINE KEYWORD -言葉定義-

ORIGINAL FRAME -縦横自作-

CLUSTERING -情報分類-

INSIGHT -理由分解-

VALUE PROPOSITION CANVAS -独自価値-

Quiz -謎々作成-

DESIGN PITCH -提案研磨-

STORY -物語作成-

CONCEPT SHEET -意図記述-

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チーム

  • Direction
    平野 友規(DSCL Inc.)
  • Workshop Design
    大竹 沙織(DSCL Inc.)
  • Facilitation
    平野 友規(DSCL Inc.)、大竹 沙織(DSCL Inc.)
  • Photograph
    矢彦沢 和音(Paradrift Inc.)
  • Videograph
    矢彦沢 和音(Paradrift Inc.)

(チームメンバーの役職などについては、プロジェクト当時のものです。)