自ら発想し提案できる人材を育成するための研修プログラム開発

自ら発想し提案できる人材を育成するための研修プログラム開発

株式会社テクノプロジェクト

『株式会社テクノプロジェクト』(以下、テクノプロジェクト)は、「技術の先に、より良い生き方を創造する。」をミッションに掲げ、IT分野で幅広いソリューション・サービスを提供している島根県の企業です。

この度、積極的にアイデア発散できる人材を育成することを目的として、デザイン思考をベースとしたアイデア発想研修を行いました。

弊社では、アイデア発想に必要な準備、量を出すアイデア発想、アイデアの言語化などを一貫して体験できる、ワークショップ形式のオンライン研修プログラムの設計を行いました。

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課題背景

提案型の案件受注のために、自ら発想し提案できる人材を育成したい

担当者の方へのヒアリングで、テクノプロジェクトの今後の目標として、提案型の案件受注を増やすことを挙げていただきました。

提案型の案件受注のためには、顧客やユーザーの視点に立ちアイデアを発想することが不可欠です。その中で、スタッフの方々の多くがアイデア発想に苦手意識を持っていることが課題となっていました。

そこで弊社では、スタッフの方々のアイデア発想力を高める、4時間のワークショップ形式の研修を設計・実施しました。本研修では、デザイン思考をベースとしたワークによって、思考を「創造モード」に切り替えてアイデア発想を楽しく実践していただくことを目指しました。

アイデア発想にはやり方があります。一つ一つのプロセスをしっかりと行い、適切な場づくりを行えば、たくさんのアイデアを出すことができます。参加者の方々にそこが伝わるように意識して研修を設計しました。

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プロセス

情報集めからコンセプトの言語化のプロセスを、デザイナーと一緒に楽しみながら体験する

今回の研修は「情報を集める」から「コンセプトの言語化」までの一連のプロセスを体験できるように設計しました。アイデア発想のための準備「情報集め」から始まり、「コンセプトを言語化」して発表するところまでを体験することで、目的である「自ら発想し提案できる人材育成」の支援を目指しました。

デザイナーと一緒に取り組むことで、いつもと違う思考を楽しめる研修に

今回の研修では、各グループ内に弊社のデザイナーが入り、参加者と一緒にワークに取り組みました。デザイナーと一緒にワークに取り組むことで、スライドの説明だけでは掴み切れない、実際の発話や振る舞いをワークの中で直に観察していただくことをねらいにしています。

ワークに取り組む際に「これで合ってるのかな」と参加者の方が不安に思ってしまうことがありますが、グループの中にお手本としてデザイナーが入ることで、「こういう考え方でやっているんだ。こんなふうに楽しんで良いんだ。」など、安心して体験していただけるようにしました。

STEP.1 アイデア発想の準備

今回の研修では、クライアントから題材にしたいサービスの指定があったため、そのサービスの「新しい機能を発想し、提案する」をテーマに進めました。

STEP.1 情報を集める

題材に関する情報が漠然としたイメージだけでは、とっかかりが少ないためアイデアが広がりません。まずはアイデアを発想するための材料を増やすため、下記のテーマで情報を集めるところからワークを始めました。

  • このサービスの目的や提供価値について情報収集する。
  • 類似サービス、競合サービスの特徴について情報収集する。
  • サービスサイトを見て情報収集する。
  • ユーザーアンケートの内容から情報収集する。
  • このサービスに関連する自分の体験を思い出してみる。

このテーマ設定では、サービス提供側の視点だけでなく、ユーザーの視点や世間一般の視点も取り入れた情報収取を体験できるようにしました。

出てきた情報は、オンラインホワイトボードに貼りチーム内で共有していただきました。

STEP.1-1 情報を整理する

次に、集めた情報をグルーピングして、サービスが抱えている課題に関連していそうなグループを「〇〇問題」というタイトルでまとめてもらいました。

例えば、今回の研修では下記のようなグループが出てきました。

  • 何ができるか分からない問題
  • 使える場所が分からない問題
  • ターゲットは誰?問題
  • 申請がめんどくさい問題
  • 満足感ない問題
  • 存在認知されてない問題

出てきた情報をただ羅列しただけでは情報が整理できておらず、まだとっかかりが見つかりづらい状態です。

その場合は、共通点や特徴を見つけてグルーピングすることによって情報が整理され、出てきた情報を俯瞰的に見えるようになります。その上で課題にフォーカスすることで、取り組むべき課題がどれなのかを検討することができるようになります。

STEP.2 課題を捉え直す

サービスが抱えている課題に対して、効果の高い解決策を考えるために、どのような方向性でアイデア発想を行うかはとても重要です。方向性を定めるために、ユーザーの理想の体験を考えることで課題を捉え直すワークを実施しました。

STEP.2-1 課題から理想のユーザー体験を考える

今回の研修では、機能を起点にするのではなく、提供したいユーザー体験を起点にアイデア発想を行うことを目指しました。そこで、出てきた問題課題に対して「『便利な機能』から考えるのではなく、ユーザーにどんな体験をしてもらいたいか」という切り口に切り替えるワークを行いました。

STEP.2-2 理想のユーザー体験から問いを考える

理想のユーザー体験からアイデアを発想するために、お題となる問いの形にしました。
例えば、今回の研修では下記のような問いが出てきました。

  • 私たちはどうしたら、このサービスを通じて社員同士のコミュニケーションを促進させることができるだろうか?
  • 私たちはどうしたら、このサービスをあえて使いたいと思わせることができるだろうか?
  • 私たちはどうしたら、このサービスを開いただけで楽しい気持ちにすることができるだろうか?

STEP.3 アイデア発想

理想のユーザー体験を起点にした問いが作れたところで、それに対する解決策を考える形でアイデア発想をしていきます。

STEP.3-1 アイデア発想のハードルを下げるマインドセットを知る

まずは、アイデア発想を苦手に感じてしまう人がで陥りがちな思考について説明しました。

アイデア発想に苦手意識のある方は、下記のような考えに囚われている場合があります。この考えに囚われていると、出せるアイデアのハードルが上がってしまい、なかなか積極的にアイデアを発散させることができません。

  • 考え抜いたアイデアを出さないといけない。
  • 自分だけでアイデアを考えないといけない。
  • 良いアイデアを出さないといけない。

その上で、アイデア発想で特に大事なマインドセットをお伝えしました。

  • 他の人のヒントになることもあるので、生煮えのアイデアでも出してみていい。
  • 発想を膨らませやすくなるので、他の人のアイデアに乗っかっていい。
  • 「これじゃない」がチームで分かることも大事なので、良くないアイデアを出してもいい。

最終的に提案するアイデアはしっかりと煮詰め、オリジナリティのあるものが必要ですが、今回はとにかく発散させることで、上記のマインドセットを持ってもらうことを目指しました。

STEP.3-2 質は問わずにたくさんのアイデアを出す

今回の研修では、アイデアを短い時間で数多くのアイデアを出す「ブレインライティング」という手法を用いました。

「ブレインライティング」は、制限時間内に思いつく限りのアイデアをシートに書いていき、途中でそのシートを他の人と交換しながら進める手法です。アイデアの質は問わずに量を出すことで、様々な切り口を短時間で検討することができます。

この手法にはいくつかメリットがありますが、とにかく量を出す活動によって「ちょっとでも思いついたら、とりあえず書いてみる」という「創造モード」に思考を切り替えやすいことが、今回の研修に取り入れた狙いです。「アイデア発想のハードルを下げるマインドセット」を取り入れることで、「誰かのヒントになるかも。」「こんな切り口もあるかも。」という思考でアイデア発想に取り組むことができます。

この方法を何度か繰り返すことで、既に頭の中にあったアイデアは出尽くしてしまうので、もっと違う切り口はないかと積極的に考えられるワークです。

STEP.4 提案に繋げる

アイデアを言葉でまとめ、他のチームに伝えられる状態にします。アイデアを言葉にする過程で、課題、解決策、理想の状態などの整合性がとれているかを意識しながら考えを整理し、アイデアを洗練させることができます。

STEP.4-1 アイデアを言葉でまとめる

「ブレインライティング」によって出てきた機能アイデアを、投票形式で1つに絞り、そのアイデアを「コンセプトシート」を使ってまとめてもらいました。

「コンセプトシート」は、穴埋め形式で提案に必要な項目を整理できるシートです。

  • 情報集めから分かったこと
  • アイデアの着眼点
  • 具体的な機能のアイデア
  • ユーザーへの提供価値
  • サービス提供者側の価値

機能アイデアを短い文章にすることで、提案内容に一貫性があるかどうかをチェックできます。抜けていた視点があれば、この段階で考えを深めます。

STEP.4-2 グループごとに発表する

「コンセプトシート」ができたら、その文章を元にグループごとにアイデアを発表してもらいました。

他チームの提案を聞くことで、切り口の違いによって最終的なアウトプットが変化することや、プレゼンテーションの工夫などを体感していただきました。

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成果

今回の研修で参加者の方々が学んだこと

研修の最後に「ふりかえり」として学んだことを言葉にして共有する時間を作りました。参加された方々からは、アイデア発想に関するさまざまな気づきやヒントを得たというコメントをいただきました。

情報集めの重要性

  • 情報は考えるための材料。多く集めることで発想が広がる。
  • どんな情報を揃えるのかも大事。

ユーザー視点で課題を捉え直す重要性

  • アイデア発想には問いが大事!
  • 様々な角度から話題を捉えることで、ブレークスルーのチャンスがある。
  • ユーザーの体験や気持ちを、問いかけの起点にする。
  • 漠然とした問いではなく、歴然とした問いを作ることで、具体的なアイデアを出しやすくなる。
  • 多様な視点や手法を取り入れながら、アイデア出しに臨むことが大切。
  • 「課題を捉えなおす」事で、仮設提案した課題を別の側面から課題をより客観的にする事ができた。

生煮えでもたくさんのアイデアを出すことの重要性

  • 頭が固くならないように、回数を重ねること既存の枠を乗り越えたい。
  • 他の人のアイデアを見たり聞いたりして、掛け合わせることで発想が広がるのがよかった!
  • 生煮えでも多くのアイデアを出してみることが大事。
  • 観点を固定せずにいろいろな角度で捉え直すことや、発散・収束の繰り返しを行うことで、より良いアイデアを生み出せる。
  • 無理やりにでもアイデアを出してみることで、たくさんのアイデアからの相乗効果が生まれる気がする。
  • 「もう出ねー」と思ってからの方が、面白いアイデアを出せた。質より量。

アイデア評価の重要性

  • アイデアを出した後は必ずフィードバックをもらうこと。
  • 答えはお客さんが知っている。

アイデアを言葉でまとめる重要性

  • フレームワークを用いることで、ある程度形になる。
  • コンセプトシートは、テンプレートを活用したので取り組みやすかった。
  • アイデア出しの結果をコンセプトにまとめ直すことで、より共感される提案になることを感じられました。
  • 最後にコンセプトをまとめ直すと、共感してもらえる提案になっているかが良く分かる。

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用いたデザインメソッド

DATA WALL -情報壁面-

VISION & MISSION -目的共有-

DESKTOP RESEARCH -二次情報-

INTERVIEW & ENQUETE -質問調査-

CLUSTERING -情報分類-

Quiz -謎々作成-

BY MYSELF -自問自答-

DESIGN PITCH -提案研磨-

LOG -痕跡保存-

CONCEPT SHEET -意図記述-

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チーム

  • Client
    株式会社テクノプロジェクト
  • Project Management
    楠 侑磨(DSCL Inc.)
  • Workshop Design
    大竹 沙織(DSCL Inc.)
  • Facilitation
    大竹 沙織(DSCL Inc.)、白砂 貴行(DSCL Inc.)、西澤 知恵里(DSCL Inc.)、岩ヶ谷 実咲(DSCL Inc.)