高度な技術力と柔軟な対応力を伝えるための事業パンフレットリニューアル

高度な技術力と柔軟な対応力を伝えるための事業パンフレットリニューアル

協立金属工業株式会社

『協立金属工業株式会社』は、ステンレス鋼線などを細く伸ばす伸線業で、神奈川県横浜市に本社を構える企業です。半導体製造装置や医療用製品にも使用可能なワイヤーを製造できるほどの高度な技術力と、顧客の思いどおりの加工を叶える柔軟な対応力が特徴です。

弊社では、新たな販路の獲得を目指すための営業ツールとして、技術力と対応力を効果的に伝えるデザインや文言をブランディングの観点から提案し、会社の強みを伝えるパンフレット制作を支援しました。

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課題背景

入れたい情報は色々とあるものの、パンフレットとしてどのようにまとめるかが定まっていない状態

最初にご相談いただいたときの内容は「ロゴなどのCIを刷新したため、さらに統一感のあるブランディングを行いたく、パンフレットを新しくしたい」というものでした。その上で、載せたい情報は色々とあるものの、パンフレットとしてどのようにまとめるかが定まっていない状態になっていることが、初回のヒアリングを通して見えてきました。

そこで弊社では、役員や営業部だけの意見ではなく技術部の視点も取り入れて、事業の提供価値を整理していくプロセスを含めた進め方をご提案しました。

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プロセス

事業の提供価値を整理するワークショップを実施

このプロジェクトのプロセスで特徴的なのは、1日かけてしっかりと事業について理解するワークショップを行なったことです。これにより、DSCLのメンバーが事業について理解することはもちろん、企業内の複数の部署の意見を取り入れながら会社の提供価値を整理していくことができました。

1.アートディレクターとデザイナーが工場を見学

まず、アートディレクターとデザイナーが工場を見学させていただきました。実際に製品を作っている工場を案内していただきながら、技術へのこだわりや、顧客のニーズにどう応えているかなどを伺いました。

弊社では、アートディレクターやデザイナーが自分の目で現場を観察することを大事にしています。例えば、納品直前のワイヤーにさまざまな形態のものがあり、その理由を質問したところ、顧客が工場で納品物をどう使うかによって製品の納品形態を様々に変えているという話を伺えました。それによって、ワイヤー自体の品質だけでなく、納品形態も含めて顧客の要望に応えることを大事にしていることが、現実感を持って伝わってきました。

このように、働く人にとっては当たり前の光景でも、アートディレクターやデザイナーが実際の現場を観察することで、その会社らしさが象徴されていたり、事業について理解するヒントとなるものが見つかることがあります。そのため弊社では、アートディレクターやデザイナーが自分の目で現場を観察する機会を作っています。

2.パンフレット使う目的を整理

次に、新しいパンフレットをどんな時に、どんな目的で使用するのかを整理していきました。会議室をお借りし、事業戦略を考える役員、顧客とやりとりする営業部、製品を製造する技術部の方と、目的について話し合いました。

どんな顧客がいるかをリストアップして俯瞰してみると、既存顧客は発注する製品が既に決まっているためパンフレットを参照する機会は少なく、新規顧客は発注したい製品のスペックが定まっていないため、パンフレットを参照しながらスペックを相談していくことが分かりました。そのため、パンフレットの主な対象者は新規顧客に設定しました。

さらに、最終的な加工品によっても発注の際に重視するポイントが変わってくるため、対象となる企業の事業領域についても分類し、「バネなどの既存領域」「医療系、半導体系などの新規の領域」に設定しました。その上で、この2つの領域の両方を意識し、提供価値を整理していくことに決まりました。

目的が整理されたことで、どのようなポイントを提供価値としてパンフレットに記載するかの指針を作ることができました。

3.事業の提供価値についての整理

最後に、事業の提供価値について、発散と収束を通して整理しました。既存のパンフレットに対する不満点を出し、そこから「何が足りないか」「何が伝わっていないか」などの問いかけで理想を深堀り、出てきた情報をいくつかの軸で整理していきました。

  • 製品の品質についての強み
  • 人の対応についての強み
  • デザインの表現上の要望

この収束によって、協立金属の提供価値は「ワイヤーの『品質の高さ』はもちろん、相談から納品まで親身に寄り添う『対応の柔軟さ』」であることが分かりました。

このワークショップによって、アートディレクターとデザイナーが自分自身で体感し、関係者の合意の上でパンフレットの対象者と伝えるべき提供価値が定まり、具体的なコンテンツとスタイリングを整えていく方針を決めることができました。

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アウトプット

製品情報を載せるだけでなく、事業の提供価値を具体的に伝えるパンフレットを制作

新しいパンフレットでは、細かい製品情報を載せるだけでなく、ワイヤーの『品質の高さ』はもちろん、相談から納品まで親身に寄り添う『対応の柔軟さ』を伝える必要があります。

事業の提供価値を一言で伝えるタグラインを開発

「妥協のない品質を、惜しみない協力を。」

「品質の高さ」と「対応の柔軟さ」を一言で伝えるため、コピーライターと共にタグラインを開発しました。さらに、表紙の写真は、ワイヤーの細さや滑らかさが際立つよう、直線的ではなく、丸みを持たせた束にしたスタイリングを提案しました。

全体のトーンは、協立金属のコーポレートカラーである青緑がかったグレーから色味を展開し、協立金属ブランドの印象を活かしました。

サービスを紹介するページでは、「対応の柔軟さ」の雰囲気を出すために、バネなどの多様な加工品を散らばらせて撮影し、親しみやすく柔らかい印象に仕上げました。

一方、「品質の高さ」を伝えるページでは、直線的なワイヤーの写真を使用したり、全体的にく重厚感のあるトーンで仕上げ、品質が高いことを視覚的にも感じられるようにしました。

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成果


プロジェクトをふりかえり、 クライアントやプロデューサーからは下記のコメントをいただきました。

  • お客さまに自社のことを説明する際の情報が網羅されているため、このパンフレットを使えば必要な情報が一通り説明できるという安心感があります。内容、機能、使い勝手など、とても満足しています。
  • パンフレットを渡したお客さまには「きれいでクリーンな印象だね」と言っていただけており、新しい領域の顧客獲得に役立っていると感じています。さらに、口コミでご紹介いただいたお客さまからも「聞いていた通りだね。」というコメントをいただき、外から見た自社の強みがしっかりと表現されていることが分かりました。そこから受注やサンプル制作につながった事例もあります。
  • プロセスについては、デザイナーの方々の工場見学を通して、第三者的な視点から自社がどのように見られているかを再確認することができました。それによって、自社の強みをまとめるのがスムーズになったかと思います。
  • デザインについては、提案段階から違和感なくお願いしていたことが盛り込まれていたので、安心してお任せすることができました。

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用いたデザインメソッド

VISION & MISSION -目的共有-

REAL EXPERIENCE -現実体験-

INTERVIEW & ENQUETE -質問調査-

CLUSTERING -情報分類-

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チーム

  • Client
    協立金属工業株式会社
  • Project Management
    小橋 隆司(DSCL Inc.)
  • Creative Direction
    日野 祥太郎(DSCL Inc.)
  • Art Direction
    日野 祥太郎(DSCL Inc.)
  • Facilitation
    大竹 沙織(DSCL Inc.)、岩ヶ谷 実咲(DSCL Inc.)
  • Concept Design
    小橋 隆司(DSCL Inc.)、大竹 沙織(DSCL Inc.)
  • Design
    日野 祥太郎(DSCL Inc.)、菅野 朱里(DSCL Inc.)
  • Photograph
    モビール株式会社
  • Text Writing
    岡澤 修平