経理業務を支援するデジタルプロダクトのUI評価・改善提案

経理業務を支援するデジタルプロダクトのUI評価・改善提案

株式会社リコー

『株式会社リコー』が開発・提供するデジタルプロダクト『RICOH 受領請求書サービス』と『RICOH 証憑電子保存サービス』について、UI評価(ヒューリスティック評価)と改善提案を行いました。

課題背景

課題はいくつか出ているものの、重要度や優先度などの指標が見いだせていない状態

経理業務を支援する2つのサービス

今回は、企業の経理業務を支援する2つのサービスが対象となりました。

『RICOH 受領請求書サービス』は、請求書や領収書のOCRを使った取り込み、手続き状況や取引先等のデータの管理、会計ソフトへの書き出しなど、一連の経理業務の効率化を支援するサービスです。。

一方で、『RICOH 証憑電子保存サービス』は、様々な形で受領・作成される証憑を一元的に電子保存するクラウドサービスで、企業の電子帳簿保存法へのスムーズな対応を支援しています。

「このUIで本当に使いやすいのか?」という疑問から、第三者によるUI評価を実施

開発チームから、追加機能の要望に応えようとスピード感重視で対応している中で、「このUIで本当に使いやすいのか?」という疑問があると伺いました。

この2つのプロダクトは、日々の業務に使用しているユーザーからは「使いやすい」という声をもらってはいるものの、開発チーム内では課題に感じる点がいくつか挙げられていました。しかし、どの課題がUX上で重要度が高いのか、どんな優先度で対応するべきかなどの指標が見いだせていない状態でした。

そこで、機能や使い方をよく知っている開発者の目線ではなく、第三者の目線で客観的にUIを評価し、UX上の重要な観点を特定することが目的に挙げられました。

プロセス

UI/UXの専門家によるUI評価と改善提案

ヒアリング・評価タスクの選定

対象のアプリやサービスについて、ユーザーの使用用途や特徴などの基本的な情報や、開発チームが感じている課題についてのヒアリングを行い、評価の対象となるタスクを選定しました。

タスクとは、そのプロダクトで達成すべき一連の操作です。ユーザーが実際に使用する主な機能に基づいて「初期設定」「書類のアップロード」「書類のダウンロード」などが選定されました。

認知的ウォークスルー

アプリやウェブサイトで達成すべき一連の操作(タスク)を、評価者が実際に操作しながら確認していきました。

認知的ウォークスルーでは、人間がコンピュータに触れる際の「認知モデル」を拠り所としています。これにより、「初めて見た人にはアイコンが示す意味が分からない」「操作できることに気づかない」など、それまで気付けなかったユーザビリティ上の課題を新たに発見できるようになります。

ヒューリスティック評価

経験則(ヒューリスティック)に基づいてユーザビリティを評価し、UI上の問題を発見する「ヒューリスティック評価」も行いました。

ユーザビリティの第一人者・ヤコブ・ニールセン博士が1990年に発表した評価手法を解釈し、弊社独自に設計した評価項目を用いて評価を数値化しました。

課題点の洗い出し・改善案の作成

数字化した評価をもとに、プロダクトごとの使用目的を考慮して評価に重み付けを行いました。

今回は、どちらも経理業務に関連するプロダクトでしたが、ユーザーにとっての価値は異なります。そのことを考慮し、よりそのプロダクトの提供価値に合った項目を洗い出しました。

さらに、評価した内容に対して、特に重要なものに対しては原因を言語化し、改善案を作成しました。

アウトプット

評価結果をレポートにまとめ、UIについてのレクチャーも含めた報告会を実施

各プロダクトの評価結果と改善案をレポートにまとめ、開発チームのみなさまにご参加いただく報告会を実施しました。

この報告会では、UI評価の結果はもちろん、開発チームからの疑問にお答えしたり、プロダクト開発の難しさを話し合う時間が半分以上を占めました。

一方的な報告会ではなく、小さな疑問から組織的な課題まで、UI/UXの様々な知見についてチームで共有し、議論する場にすることができました。

成果

客観的なUI評価とその重み付けにより、その後の開発にチーム全体で活かせる指標を見出した

本プロジェクトでは、UIを改善する指標を作ることを目指し、エキスパートによる評価を基に課題のリストアップと、各課題の重み付けを行いました。

チーム内の課題のリストアップに加え、エキスパートによる評価を取り入れることで、どの課題が重要かを示す指標が明確になり、改善への具体的な開発が可能となりました。

特に、各プロダクトの開発に携わるエンジニア、PO、デザインなど各セクション間での共通の指針ができたことで、改善の優先順位を決定しやすくなったと伺いました。結果として、チーム内の合意形成が進み、開発チームのモチベーション向上にも寄与しています。

これにより、UI改善の具体的な方針が明確化され、効果的な改善が進行中です。

用いたデザインメソッド

DATA WALL -情報壁面-

VISUALIZATION -図解作成-

REAL EXPERIENCE -現実体験-

CLUSTERING -情報分類-

チーム

  • Client
    株式会社リコー
  • Project Management
    落合 健太郎(DSCL Inc.)
  • UI Assessment
    落合 健太郎(DSCL Inc.)
  • UI Assessment
    大竹 沙織(DSCL Inc.)

(チームメンバーの役職などについては、プロジェクト当時のものです。)