日本の廃ペットボトルリサイクル最大手として取引の選考基準に乗るためのパンフレットリニューアル
遠東石塚グリーンペット株式会社
『遠東石塚グリーンペット株式会社(以下FIGP)』は、ペットボトルをペットボトル原料へとリサイクルする「Bottle to Bottle」に特化した事業を展開しています。国内最大規模のR-PET工場を運営し、日本のペットボトルリサイクルの基盤を支えています。
「Bottle to Bottle」の事業を拡大していくために重要な要素として、「原料の売り手」と「製品の買い手」となる市町村や企業との取引が挙げられます。「Bottle to Bottle」の循環に関わる取引の選考基準に乗り、次の商談に進むことを目的として、事業紹介パンフレットのリニューアルプロジェクトが発足しました。
弊社では、ブランディング観点の情報整理からパンフレットのデザイン制作まで一貫して支援を行いました。
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課題背景
追加したい要件が発散状態で、パンフレットとしてどうまとめるかが定まっていない状態
このパンフレットは、市町村や企業などの取引先に対して、FIGPがリサイクルペットボトルのリーディングカンパニーであり信頼できる企業であることを印象づける役割があります。
それまで使用していたパンフレットに載っている、FIGPの会社の成り立ちや廃ペットボトルの加工プロセスなどの情報をどのように更新するか、原料調達部や販売部からの意見をどのように取り入れるかなど、追加したい要件が発散している状態でした。
そのために、市町村や企業などの取引先がどんなこと情報を必要としているのか、どのような伝え方が良いのかを明確にするところから支援をスタートしました。
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プロセス
パンフレットのターゲットと使用目的に関する情報を洗い出す
「追加したい要件が発散状態」という課題から始まったプロジェクトですが、追加したい要件をまとめる前に、まずは新しいパンフレットのターゲットや使用目的を発散と収束のプロセスによって整理していきました。ターゲットと使用目的が定まらないと、必要な内容について議論できないからです。
今回は、ある情報を洗い出すために、クライアントにオンラインでヒアリングを行いました。オンラインホワイトボード「Miro」を使用して、出てきた情報を文字や図で可視化して、プロジェクト参加者と合意をとりながら分類していくことができました。
事前に資料化して共有いただくのではなく、デザイナーと一緒に話しながらまとめることで、デザイナーの事業理解度の向上はもちろん、情報同士の関連性や重要度をその場で視覚化しながら進めらるので情報整理を効率的に行えます。
発散状態だったパンフレットの方針を整理して収束させる
ヒアリングでの発散と収束によって、このパンフレットを渡す相手は「原料調達や製品取引など、BtoBの循環に大きく関係する取引先」だということが分かりました。そこから、ターゲットは「廃ペットボトルの売り手(市町村)」「リサイクルペットボトルの買い手(飲料メーカー)」と定義しました。
ヒアリングの中では、パンフレットを渡す相手が複数出てきましたが、方向性を絞りやすくするために下記の3段階に分けて整理しました。
- メインターゲット
- サブターゲット(メインではないが、同様の情報を参考にする可能性がある取引先)
- ターゲット対象外(配布するケースはあるが、具体的な活用方法は想定しない)
パンフレットの使用目的は「取引の選定基準に乗るためのツール」と定義しました。選考基準に乗るまでに、パンフレットには下記の2つの役割があることが分かりました。
- 提案資料や計画書に同封する「おみやげ」としての役割
- 入札時にどの企業に声をかけるか判断するための「参考資料」の役割
パンフレットは、「おみやげ」として担当者の方の記憶に、捨てずに残り取っておいてもらえるようなものです。そして「参考資料」としてしっかりとFIGPの信頼感を伝えるものでもあります。
今回は、最終的に「原料の売り手(市町村の担当者)から入札時に声をかけられるための情報を中心に構成し、製品の買い手やその他の取引先にも信頼感が伝わるパンフレット」という方向性に決定しました。
ターゲットと使用目的が定義されたことで、デザインやコンテンツについて議論できるようになりました。
目的に沿って載せる内容と伝え方を決める
取引先の担当者に信頼感を持ってもらうためには「FIGPは日本の廃PETリサイクルを支えている存在」だと伝える必要があります。
それまで使用していたパンフレットでは、当時の事業状況に合わせて、親会社の情報が見開きページに掲載されていました。今回のリニューアルでは、まずは事業の規模について載せることで、行政の仕事も安定して請け負える事業規模であることを伝える設計にしました。そこから、Bottle to Bottleの技術力、製造プロセスなど、FIGPの信頼感の根拠となる内容が続きます。
内容の専門性については、取引先の担当者の方はある程度専門的な知識があるので、初歩的な書き方ではなく、品質、規模、安全性などについて詳細に記載する方針に決まりました。さらに、業界を牽引するリーディングカンパニーとしての位置付けも伝えるために、事業内容だけでなく企業メッセージを伝えるページも含めることにしました。
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アウトプット
「循環するパンフレット」を制作
コーポレートサイトの印象を踏襲
FIGPのブランディングについては、コーポレートサイトリニューアルの際に、弊社で行わせていただきました。今回のパンフレットも、そのブランディングを基盤にデザインを展開しました。
「循環」をコンセプトにデザインを展開
『FIGP』は、ペットボトルをペットボトル原料へとリサイクルする「Bottle to Bottle」に特化した事業を展開しています。そこで、今回のパンフレットは、ペットボトルの「循環」をコンセプトにデザインしました。
ページを進めるごとに循環を感じさせる水しぶき
今回のパンフレットの大きな特徴は、全体を通して大きな流れを感じさせる水しぶきが随所に使用されているところです。
この水しぶきは、今回のパンフレットのために、実際に水をまいて撮影をしています。ブランドに合わせて新たに撮影した写真素材を使用することは、「どこか他にもありそうなもの」ではないブランドイメージを伝えることに繋がります。
横に大きく流れるような水しぶきに加えて、丸みのある要素や斜めの要素を組み合わせることで、ページをめくった時に次のページと繋がっているような印象にしています。これらの要素によって、パンフレット全体を通してダイナミックな「循環」を感じさせます。
ロゴに込められた意図を視覚的に表現
FIGPのロゴは「循環」を表現する矢印で構成されています。見開きページでは、その矢印の流れに合わせて再生フレーク、再生レジン、リサイクルペットボトルの順で写真を掲載しました。それにより、FIGPのロゴに「妥協しない品質で、サステナブルな社会を実現。」という理念が込められていることを伝えています。
ペットボトルを高品質な再生レジンにリサイクルする事業を表現
表紙のペットボトルの写真からパンフレットが始まり、裏表紙の最終的な製品としての再生レジンの写真で締めくくられています。最後までパンフレットに目を通し、また表紙を見るとペットボトル冊子全体を通してペットボトルが再生レジンになるリサイクル事業を表現しています。
ペットボトルの写真は、FIGPの「妥協しない品質」を表現するために、コントラストの強いスタイリングで撮影し、高品質なレジンを彷彿とさせる透明感を際立たせました。
情報を更新しやすいパンフレット
事業紹介に必要不可欠な「会社概要」については、冊子とは別に1枚の紙にまとめています。これは、社員数や設備能力など変わりやすい情報を更新する際に、古いパンフレットを処分しなくてよいようにするためです。これにより、情報の更新性を高めることと、パンフレットを無駄にしないことを両立しています。
会社概要の裏面には、事業規模や社内カルチャーをグラフィカルにアイコンや数字で表現した「NUMBERS OF FIGP」というコンテンツを掲載しています。このコンテンツには、事業規模が数字でパッと分かるだけでなく、働き方や社内カルチャーを表す数字からFIGPらしさを感じることができます。中には、社員の平均ゴルフスコアなど、営業の際に話のきっかけとなるような情報も掲載しています。
信頼感を伝える製本加工の工夫
製本の加工についても、リーディングカンパニーとしての信頼感を伝える工夫を施しています。
- 情報を詰め込みすぎず、ページごとのメッセージをゆったりと読めるページ構成を意識
- 加工の工程説明するページでは、「観音開き」の仕様にすることで、たくさんある工程を無理なく説明
- パンフレットを包む「タトウ」で、大事なもの感、おみやげ感を演出
「タトウ」とは、パンフレットを名刺や他の資料とセットでお渡しできる、紙製のファイルのようなものです。今回の「タトウ」は、FIGPのロゴの要素を使いながら、ペットボトルとレジンが交互に繰り返される風呂敷のようなパターンを作り、デザインしました。その「タトウ」を開くと、再生レジンにパンフレットと名刺が乗っているような見え方になり、大事なもの感、おみやげ感を演出しています。
パンフレットのお渡しに関わる封筒や名刺も、FIGPのブランディングを構築したものに沿って、弊社で制作しました。
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用いたデザインメソッド
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チーム
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Client遠東石塚グリーンペット株式会社
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Produce菅原 理之(BOOSTAR INC.)、大澤 允之(BOOSTAR INC.)
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Creative Direction日野 祥太郎(DSCL Inc.)
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Art Direction日野 祥太郎(DSCL Inc.)
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Concept Design大竹 沙織(DSCL Inc.)
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Design日野 祥太郎(DSCL Inc.)、菅野 朱里(DSCL Inc.)
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PhotographBan Yutaka