音楽を形あるアートにするアナログレコードプレスサービスのサイトリニューアル

音楽を形あるアートにするアナログレコードプレスサービスのサイトリニューアル

ウルフパック・ジャパン株式会社

「ウルフパック」は、パリ本社を拠点にバルセロナと東京にネットワークを広げ、世界中のアーティストや音楽レーベルの作品作りをサポートしているアナログレコードプレスサービスです。チェコの世界最大のレコード工場と提携することで高品質なレコードをスピーディーに提供するクオリティと、アナログレコード作りを最後まで手厚くサポートするホスピタリティが特徴です。

時代はストリーミングサービスをはじめデジタルで音楽を聴く環境が主流となっていますが、デジタルでは再現できないアナログ音質で視聴できるレコードが今、世界中の若い世代のリスナーに新しい音楽の体験としてふたたび定着してきました。

「素晴らしい『音楽体験』を本質的な価値として次世代に伝える」というミッションの達成に向けて、弊社ではブランディングの観点からサービスサイト制作支援を行いました。

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課題背景

バラバラに語られていたサービスの提供価値をブランドの軸で言語化するところから、プロジェクトをスタート

「ウルフパック」では、競合サービスの参入やカッティングスタジオの新設に伴い、サービスの提供価値を明確に伝えることが必要とされていました。しかし、音質へのこだわり、敷居の低さ、コミュニケーションの取りやすさなど、競合と差別化できる点はいくつかあるものの、それぞれがまとまっておらずバラバラに語られている状況でした。

サービスの提供価値を伝えるために、どんな人に対してどんな価値を提供しているのか、ウルフパックブランドの軸を見つけて言語化することろからプロジェクトをスタートさせました。

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プロセス

提供価値を言語化し、顧客に伝わるよう具体的に形作る

サービスの提供価値を「クオリティ」と「ホスピタリティ」の視点で整理し、ブランドの軸を見つけるワークショップを開催

ブランドの軸を見つけるために、リニューアル前のウェブサイトの不満点を足がかりに、サービスの提供価値を整理するワークショップを行いました。このワークショップを通して、弊社のデザイン思考の基礎となる6C model(Design School Kolding, 2014)の「COLLECT(集める)」「COMPREHEND(分析する)」「CREATE(作る)」「COLLABORATE(一緒にやる)」のアプローチをクライアントと一緒に行いました。

  • デザイナーが想像を膨らませるために、サービスの特徴や込められている想いを社長や担当者に語っていただく
  • サービスサイトの各ページの不満点と理想の状態を出す
  • 他社のサービスサイトを見て、サービスの特徴や市場でのポジションを分析する
    • 同業種で、レコードプレスサービスのサービスサイト
    • 別業種で、カスタマイズオーダーできる製品のサービスサイト
  • 分析したことと自社サービス照らし合わせ、「クオリティ」と「ホスピタリティ」の視点で提供価値を整理する
  • ブランドを言い表すタグラインの素となるキーワードを出す
  • ワークショップで話してきたことを基に、新しいサービスサイトのキービジュアルの方向性を決める

このように、サービスサイトの課題抽出やデザインの方向性決めを関係者と一緒に行うことで、ステークホルダーの想いややりたいことをしっかりと織り込んでデザインすることができます。さらに、チームメンバーがサービスについて共有の言葉で話すことができるようになり、意思疎通の質の向上にも繋がります。

このワークショップによって、顧客はリスナーではなくインディーズレーベルのアーティストであること、彼らにレコード作りや「ウルフパック」のビジョンについて分かりやすく説明する必要があること、音楽を愛する仲間として彼らのレコード制作をサポートしていることなどを伺うことができました。

これらの話を通して、最終的に「LOVE & CARE」というキーワードが抽出されました。

サービスの理念を伝えるコンテンツを提案

リニューアル前のサービスサイトでは、「WHAT…ウルフパックとは?(商品、サービス)」と「HOW…どうやるのか、その良さは?(商品やサービスの説明、方法、理論)」のコンテンツはありましたが、その前提「WHY(信念、目的、何のためするのか)」は載っていませんでした。しかし、その「WHY」が競合との違いが生まれるポイントです。

そこで、サービスサイトの不満点の解消に加えて、サービスの「WHY」を伝えるために、運営会社の理念を新たに載せることをご提案しました。

運営会社『ウルフパック・ジャパン株式会社』の理念を下記の軸で整理

  • VISION(こうしたい、こういう世の中にしたい)
  • MISSION(VISIONのためにやっていくこと)
  • VALUE(MISSIONを遂行するにあたり、大事にしていくこと、できること)

サービスの提供価値がアーティストやレーベルに伝わるよう形にする

レコードの品質にこだわるアーティストやレーベルに向けた分かりやすいサービス説明

リニューアルしたサービスサイトで特徴的なのは、レコードの品質にこだわりのあるアーティストやレーベルが安心してレコードを発注できるよう、サービスの内容について分かりやすく説明している点です。

サイト内の「SERVICE(サービスについて)」のページでは、クオリティとホスピタリティの視点で、どのようなサービスをどのような想いを持った人から受けられるのかを説明しています。

サービスの内容に加えて、どんな人がカスタマーサポートを行なっているのかを伝えるために、スタッフの写真を掲載しています。サービスの提供価値を言葉と写真で伝えることで、「ウルフパック」のサービスを利用したことがない人でもサービスでどんなことをしてもらえるのかを想像することができます。ユーザーに関わる制作プロセスだけでなく、入稿や支払い後にどのようなことが行われるのかも「制作ガイド」に記載することで、ユーザーも制作プロセスを想像することができるようになり、安心感や納得感につながります。

Q&A(よくあるご質問)」のページは、元々は外部サイトを使用していましたが、今回のリニューアルで改めて必要な内容を精査し、サービスサイト内に入れられるように収束させました。それにより、ユーザーにとってサイトの構造が分かりやすくなり、必要が情報にたどり着く負荷を下げることができます。

トップページは、「ウルフパック」の高いクオリティを写真から感じてもらうために、海外の工場、プレススタジオ、完成したレコードの写真を使用して制作しました。さらに、ストリーミングで音楽を楽しむ若い世代にも親しみを感じてもらえるようなビジュアル制作を目指しました。

全体のトーンは既存のブランドイメージと乖離しないように

今回のリニューアルでは、今までのウルフパックユーザーがリニューアル後のサイトを見ても、ブランドイメージが乖離しないようにする必要がありました。そのため「ウルフパック」のブランドカラーやロゴの要素を使用し、既存のブランドイメージを取り入れながらデザインをアップデートしています。

ウルフパックらしさの取り入れ方の例として、ロゴの要素をサイト全体に入れている点が上げられます。「ウルフパック」のロゴは、立方体のボックスを斜め45度から見たような形をしています。そのボックスの要素をパターンにして見積もり画面への導線やメニューなどサイトの重要な部分の背景に使用しました。ボックスのパターンでも、色面を立体的に見えるように配置したり、線だけで表したり、表現を変えることで同じモチーフを使用しながらも印象の強さを場所に合わせて調整しています。

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アウトプット

ミッションに沿ってサービスサイトをリニューアル

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成果

プロジェクトをふりかえり、 クライアントからは下記のコメントをいただきました。

  • 素晴らしいサイトを作っていただき、非常に満足しています。新しくオープンした自社のレコードカッティングスタジオについても掲載することができ、レコードプレスサービスとしての「音質へのこだわり」も伝えられる媒体となりました。
  • 今回のリニューアルで、ウェブサイト運用の基礎部分ができたと感じています。それによって、オンライン見積もりシステムのアップデートや多言語対応など、今後の事業戦略に合わせた改善を順序立てて見通せるようになりました。
  • 制作プロセスの中では、最初に付箋などを使ってのヒアリングを行っていただきました。その場で話しながら情報整理を行ったことで、提案いただいたデザイン案の意図が分かりやすくなり満足しています。あのヒアリングあっての今回のリニューアルだと感じています。
  • ブランディングについては、マーケティング戦略とバランスよく組み合わせていくことで、競合の中からお客様の選ばれるような施策を打っていきたいと考えています。

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用いたデザインメソッド

DATA WALL -情報壁面-

VISION & MISSION -目的共有-

INTERVIEW & ENQUETE -質問調査-

DEFINE KEYWORD -言葉定義-

CLUSTERING -情報分類-

PROTOTYPING -試作体験-

CONCEPT SHEET -意図記述-

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チーム

  • Client
    ウルフパック・ジャパン株式会社
  • Creative Direction
    日野 祥太郎(DSCL Inc.)
  • Facilitation
    大竹 沙織(DSCL Inc.)
  • Design
    日野 祥太郎(DSCL Inc.)
  • Technical Direction
    小島 準矢(DSCL Inc.)