遠東石塚グリーンペット株式会社(以下、FIGP)は、台湾の遠東グループと日本の総合容器メーカー石塚硝子株式会社の合弁により2012年5月に設立されました。日本におけるペットボトルリサイクルの最大手であり、「Bottle to Bottle」というペットボトルの水平リサイクルモデルを事業化しているのが特徴です。
近年、飲料用にも対応できるリサイクルペットボトルの需要・生産量の高まりを受け、工場を新設している状況です。それに伴い、従業員の採用も積極的に行う必要が出てきました。
そのためコーポレートサイトを、飲料メーカーなどの顧客企業だけではなく、主に求職者に向けて、企業のメッセージや使命、働く上での魅力が伝わるものにリニューアルするために本プロジェクトが発足しました。
「ペットボトルリサイクルのリーディングカンパニーとして、ブランドメッセージを強く発信することで、会社・業界の見え方を変えていきたい」というビジョンの実現に向けて、弊社ではブランディングから支援を行いました。
コーポレートサイトリリース後も、事業紹介パンフレットや名刺など、各種ツールのデザインを通してブランディングを支援させていただいております。
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課題背景
コンテンツが発散状態で、1年ほど膠着していたリニューアルプロジェクト。弊社が参画し、発散と収束のプロセスを支援。
本プロジェクトは、リニューアルプロジェクトとして始動してから、行ったり来たりを繰り返し、1年ほどなかなか前進できずにいたと伺いました。そこから、社長直下のプロジェクトとして再始動したタイミングで、プロデューサーから弊社にお声がけいただきました。
新しいサイトのターゲットや、やりたいことのキーワードなど大枠は決まっていましたが、それをどう伝えるのか、どんなデザインの方向性にするのかを組み立てる必要がありました。そこで弊社では発散と収束のプロセスを支援し、プロジェクトの前進に貢献しました。
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プロセス
目的、ターゲット、伝えたいメッセージ、コンテンツ、デザインが一本の「FIGPブランド」という軸で繋がるようにしっかりと収束を行う
本プロジェクトの中で特徴的なのは、発散状態だったコンテンツをFIGPブランドや事業戦略に合わせてしっかりと収束させ、デザインに落とし込んでいったことです。
発散状態のものを「WHY(なぜ作るのか、目的)」「HOW(どうやって達成するのか)」「WHAT(デザインなどの最終成果物)」に当てはめて収束させることで、目的から一本の軸で繋がったデザインをすることができます。
本プロジェクトでも、「FIGPブランド」という軸で繋がるようにしっかりと収束を行うことで、膠着状態だったものをデザイン制作まで前進させることができました。
社長インタビュー
プロジェクトの概要を伺った後、社長にオンラインでインタビューを行わせていただきました。そこで、このリニューアルプロジェクトが事業戦略のどの部分に関連するのか、社会にとってどのような意味のある事業なのか、従業員や働くことについての想いなどを存分に語っていただきました。
インタビューでは、下記のような事業や従業員への想いをたくさん伺うことができました。
- 製造業として『リサイクルだから』という妥協はない
- ペットボトルのリサイクルについて、昔からやってると思っている人も多いが、Bottle to Bottleはかなり新しい取り組み
- 会社は人のポテンシャルを発揮させるための器と捉えている
- 従業員には、人生をエンジョイしてほしい
テキスト資料ではなく実際にインタビューさせていただくことで、語り方や仕草から、大事にしていることや伝えたいメッセージがいきいきと感じられ、プロジェクトメンバーが共感を持って理解することにも役立ちました。
目的とデザインを繋ぐコンセプトを設計
WHY(なぜ作るのか、目的)
まず、インタビューの内容から「KPIとリニューアルの関係」「全般的なターゲット」に関連する箇所を抽出し、それをもとに目的を定義しました。今回は「リサイクルについての品質を伝える専門的なサイトから、会社の使命、品質へのこだわり、働く人にとっての魅力を求職者に分かりやすく伝えるサイトへ。」としました。
それまでのコーポレートサイトは、パートナー企業や、これからFIGPを知ってもらえる人たちをターゲットにしていたため、リサイクルの工程などを詳細に説明することで、リサイクルペットボトルの品質の高さを伝えていました。
新しいコーポレートサイトは、採用についての情報発信の場にもなるため、求職者を主な対象としました。求職者は、リサイクル業界初心者の方も多いので、リサイクルについての詳細で正確な情報よりも、FIGPの事業のインパクトや働く魅力を分かりやすく伝える方針にしました。
HOW(どうやって達成するのか)
次に、目的を達成するために、デザインでどんなことを実現していくかというコンセプトを設計しました。インタビューで伺った発言のひとつひとつを「事業について」「働きやすさ」「社長の想い」に分類し、抽象化していきました。
- 「Advanced(先進的)」 リサイクル業をクリーン、安全安心なイメージに。先進的なFIGPのブランドを伝える。
- 「Proud(誇り)」 社員の働きがいを伝え、今いる従業員にとっても改めて誇りを感じられるサイトに。
- 「Clear(明晰)」 使命、規模、品質へのこだわりなどを、誰が見ても分かりやすく伝える。
上記のコンセプトに合わせて、使用する画像、言葉遣い、図で解説する箇所などをご提案し「働く人にとっての魅力を求職者に分かりやすく伝えるサイト」の実現を目指しました。
上記のように「WHY」「HOW」としてしっかりと収束させることで、「WHAT(デザイン制作物)」スムーズに作ることができました。
全体像を思い浮かべながらプロジェクトを進めるために資料化
プロジェクトメンバーが全体像を把握できていないと、議論が発散してしまい、効率的に意思決定をしていくのが難しくなります。目的がぶれた状態で制作を進めると、中盤で大きく方針を変えたり、デザイン案を発散させすぎて選べなくなってしまうことがあります。
そこで今回は、議事録とは別に、「WHY」「HOW」「WHAT」が一貫して理解できる資料を作成しました。この資料によって、デザイナー以外のメンバーもデザインの意図を理解することができるようになり、「主観的なかっこいいサイト」ではなく「ブランドや事業戦略に沿ったデザイン性の高いサイト」を作ることにつながりました。
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成果
8月に支援を開始し、翌年1月にはリニューアルしたサイトをリリースすることができました。
プロジェクトをふりかえり、 クライアントやプロデューサーからは下記のコメントをいただきました。
自分たちの事業への自信を再認識できる、メッセージ性の強いコーポレートサイトになった
- 最初は「これも入れたいあれも説明したい」と、どうしても自分達のやっていることをアピールしたくなって、情報が発散してしまっていました。しかし、サイトのイメージを視覚的に見せてもらいながら考えたことで「これは重複している、これはやっぱり載せなくていい」など、ウェブサイトの目的に沿って情報を取捨選択できるようになりました。
- 完成したコーポレートサイトは、事業規模や売上だけでなく、会社のビジョンをはっきりと示す場になっていて、自分達が日々行っていることに対して改めて「かっこいいことをやっている会社なんだ」と再認識しました。自信を感じられるコーポレートサイトになり、社内的な満足度も高いです。
- 求職者は、スカウトメールなどを送るとまずはコーポレートサイトを見てくれます。「日々の業務で社会に貢献していることを感じたい」と面接で話す方が多く、コーポレートサイトではそういったメッセージをしっかりと発信できているため、そこで魅力を感じてくれる求職者が多い印象です。
- 求職者への訴求を強めたいという希望どおり、メッセージ性の強いコーポレートサイトになったと思います。実際、求職者の方からも、「会社の方向性に興味を持った。」「ホームページがキレイですね。」といった声も寄せられており当方としては、「してやったり。」の感もあります。
いくつかある情報をどう載せるべきか、能動的に提案しながら進めることができるようになった
- やりたいことやイメージしていることを言葉だけで議論するのが難しいことがあったが、デザイナーがすぐに形にしてくれる体制を作れたことで、それをベースに話を進めることができるようになりました。今後もこのような体制で一緒に進めることで、スピードも速くなりクオリティも上げられると思います。
- 一般的な順序だと、ウェブサイトに載せる情報を全ていただいてから構成を考えます。DSCLが入ったことで、いくつかある情報をどういう形で載せると分かりやすいのか、能動的に提案しながら進めることができるようになりました。
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用いたデザインメソッド
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チーム
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Client遠東石塚グリーンペット株式会社
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Produce大澤 允之(BOOSTAR INC.)、菅原 理之(BOOSTAR INC.)
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Creative Direction日野 祥太郎(DSCL Inc.)
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Art Direction日野 祥太郎(DSCL Inc.)
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Concept Design大竹 沙織(DSCL Inc.)
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Design日野 祥太郎(DSCL Inc.)、谷津 吉宣(DSCL Inc.)、菅野 朱里(DSCL Inc.)
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Front-end Development小島 準矢(DSCL Inc.)、浅見 要介(DSCL Inc.)
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Text Writing岡澤 修平
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PhotographBan Yutaka