部署や部門をまたいだ「統合サービス開発プロジェクト」のチームビルディング支援

部署や部門をまたいだ「統合サービス開発プロジェクト」のチームビルディング支援

株式会社リコー

『株式会社リコー』は、リコー製品内にインストールして使うアプリケーションの開発や販売ができるプラットフォームサービスの開発を行いました。これは、社内外問わず、システムエンジニアがコミュニケーションをとりながら一緒に開発を進められるサービスです。
弊社では、プロジェクト関係者が熱を持って的確な議論を行うための土台となるチームビルディングを支援しました。

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課題背景

このプラットフォームは、『株式会社リコー』の持つ様々なサービスを統合的に扱い、社内外問わず開発に関われる場であることが想定されていました。そのため、プロジェクトチームも部署や部門を超え、企画、アナリスト、デザイナー、エンジニアなど多様な役職の人が関わっていました。しかし、その多様さゆえに、それぞれの持つ情報が共有されづらく、サービスについての認識がバラバラになっているという課題がありました。

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コンセプト

サービスの見えていないものを、みんなで見えるようにしよう

打ち合わせを通して、私たちはチーム内で共有されていない情報や、はっきりと定義されていない情報があることに気づきました。そこで、チーム全員でプロジェクトの目的や想定しているサービス内容をはっきりと定義し、それを表現する言葉を揃えるための施策を行うことにしました。

チーム内で共通の認識を持っておくことは、チームが持っている多様な知見をサービス開発にしっかりと活かすための土台となります。

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プロセス

チームの共通認識づくりワークショップ

私たちは「チームの共通認識づくりワークショップ」を設計し、実施しました。
このワークショップによって、関係者全員がサービスの全体像を把握できている状態になることを目指しました。

・参加者:プロジェクトに参加している関係者9名(+DSCLメンバー3名)
・時間 :4時間

ワーク1「それぞれが持っている情報をとにかく出す」

まずは、チームメンバーそれぞれが持っている情報を、とにかく全て出していきます。

今回は、下記の項目で重点的に出していただきました。
・プラットフォームとなるサイトの”内容・機能”
・プラットフォームをを使う”人”(社内社外は問わない)

このワークのポイントは、その場の雰囲気や言い方で判断せず、出た情報は全て付箋に書き留めることです。情報の整理はこの後のワークで行うので、この時間ではとにかくチームが持っている情報を出していただくことに徹しました。特に「理想の機能」についてもしっかりと拾うことで、チームが将来的に目指したい方向が見えるようなります。

DSCLのメンバーは「他にありますか?」「具体的に言うと誰ですか?」などの問いかけによって、出た情報をより明確にするサポートを行いました。また、書記として付箋への書き留めを担当することで、参加者に情報を出すことに集中していただけるように工夫しました。

今回はこのワークによって、作ろうとしているサービスには予想以上に多くの機能があり、多くの人が関わることがチーム内で認識できました。

ワーク2「情報を分けて、粒度を揃える」

次に、ワーク1で作成した付箋をいくつかのグループに分けて、それに名前をつけました。付箋を分ける際、A4サイズの紙に貼っていくことで、1項目ごとの付箋の枚数が制限され、どの項目も情報の粒度を同じくらいにすることができます。項目の名前は、ファシリテーターが助言しながら、参加者につけていただきました。

これにより、かなり具体的で細分化されていた情報が、議論で使いやすい粒度になり、それを表す言葉をチーム内で持てた状態になりました。

ワーク3「サービスを使う人の目線になって、機能を評価する」

そして「プラットフォームをを使う人」の中で特に重要な人を数人選び、その人の目線に立ってサービスの機能を評価しました。今回は、2人1組になってこのワークを行い、想像の幅を広げて1人の主観で評価されてしまわないようにしました。

ここで重要なのが、評価軸を単純な一つの軸にしないことです。サービスの機能は単純に点数で評価できるものではなく「何のためにあるのか」「誰にとって重要なのか」「どんな性質があるのか」などの視点で捉える必要があると考え、このワークショップは設計されています。

このワークでは3種類のシールを用いることで、機能を評価していただきました。
・すごい! (画期的、先進的だと思う機能)
・無いと困る! (必須だと思う機能)
・気が利いてる! (かゆいところに手が届くような、地味に便利だと思う機能)

使う人の目線で直感的に評価を行うことで、つじつま合わせのような機能をなくし、本当に必要な機能を見極めることができます。そのために、評価に用いるシールには、日常で使うような感情を含んだ言葉を使いました。

この評価の目的は、機能に順序をつけてサービスの全体像を浮き上がらせることです。このワークを経ることで、チームメンバーの機能についての理解度が一気に上がり、納得した状態でサービスの全体像を捉えることができました。

今回のワークショップで、発見が一番多く盛り上がったワークでした。

ワーク4「マッピングしてまとめる」

最後に、出た情報や定義した言葉をマッピングして、関係性を表す図を作成しました。今回は扱う情報量が多かったため、模造紙を4枚ほど繋げて大きな一枚の相関図を作りました。ワーク1で出た情報量が予想以上に多く、図も複雑になり、まとめの作業は途中までとなりました。しかしそれが、このサービスの大きさを実感する要因にもなりました。

このワークで作成する図は、チームで全体を把握し、議論する際にどの範囲の話をしているのかを伝えるのにも役立ちます。

今回の「チームの共通認識づくりワークショップ」は、ウェブサイトやアプリケーションの要件を定義するために設計したワークショップをアレンジしたものです。チームの人数が多く、議論のすれ違いが発生してしまう場合は、まずチーム内でプロジェクトについて共通の認識を持ち、議論の土台を作ることが重要です。

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成果

チームに共通理解と熱が生まれた

このワークショップを行い、参加者の方々から下記のようなコメントをいただきました。

  • サービスの目指す方向、そして現在地が初めて全員で把握できた
  • シールを使った評価では、横並びだった項目に順序が付き、サービスの全体像が立ち上がってくる感覚があった
  • 4時間ではとても整理しきれない、広くて深い、海のような壮大なサービスだと分かった
  • サービスの目指す方向についてみんなで話す時間が今までなかったので、メンバーがどう考えているのかを理解する貴重な機会になった
  • プロジェクトの具体的な課題に気づき、その課題をみんなで認識したのは重要な一歩だと思う

多忙な中でまとまった時間をとっていただき、はじめは「本当に4時間も必要なのか?」と感じられた方もいらっしゃったと思います。しかし、このように、実際にワークショップを体験することで「チームの共通認識づくりワークショップ」の有用性を実感していただくことができました。

さらに、ワークショップ実施後に開催した食事会では、ワークショップに参加した全員に出席していただくことができ、チームとしての熱が生まれたことを実感しました。

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用いたデザインメソッド

TEAMWORK -親密関係-

VISUALIZATION -図解作成-

ROLE PLAY -演劇体験-

PROTOTYPING -試作体験-

IMPACT & FEASIBILITY -発想評価-

VISION & MISSION -目的共有-

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チーム

  • Client
    株式会社リコー
  • Direction
    村上 由朗(DSCL Inc.)
  • Workshop Design
    村上 由朗(DSCL Inc.)
  • Workshop Design
    白砂 貴行(DSCL Inc.)
  • Workshop Design
    楠 侑磨(DSCL Inc.)
  • Facilitation
    白砂 貴行(DSCL Inc.)
  • Assistant
    横田 奈々(DSCL Inc.)