目次
- 1. 現状診断(外部/内部環境の把握)
- 市場 / 競合 / 顧客調査(定量×定性)
- 社内ヒアリング / 現状評価
- 2. ブランドコンセプトの言語化(価値 / ストーリー / 行動原則)
- 価値命題・タグライン・ナラティブの構築
- 社内合意形成ワークショップ
- ワークショップの進め方
- 3. ビジュアルアイデンティティの設計(見せ方)
- ビジュアル言語の抽出と設計
- デジタル・接客での体験設計への落とし込み
- 4. ブランドガイドライン・デザインシステムの構築
- ブランドガイドラインの作成と運用
- デザインシステムとしての拡張
- 5. 伝え方の設計:社内外への浸透
- セグメント別メッセージング&チャネル戦略
- 組織内浸透と従業員ブランディング
- 6. 運用・評価・改善サイクル(測定と学習)
- KPI設計と効果測定
- レビュー会と改善アクション
- まとめ
- ブランディングの手順に関するよくある質問(FAQ)
ブランディングプロジェクトを始めようとしたとき、多くの担当者が最初に直面する壁は「どこから手をつけるべきか」という手順の不明確さと、関係者間での「合意形成の難しさ」です。
「カッコいいロゴを作ること」がブランディングではありません。成功の鍵は、「言葉(在り方)」→「体験(見せ方)」→「運用(伝え方)」 という3つの段階を一貫したストーリーとして通すことにあります。この一貫性がなければ、どんなに美しいデザインも機能しません。
本記事では、抽象論ではなく、株式会社デスケルが実際のプロジェクトで用いている具体的な進め方と、各フェーズでの意思決定ポイントを解説します。
※企業ブランディングの全体像については、企業ブランディング戦略|顧客に選ばれる企業になる実践ガイドで詳しく解説しています。

1. 現状診断(外部/内部環境の把握)
ブランドの「在り方」を決める前に、まずは現在地を正しく把握することから始めます。ここでの調査不足は、後々の手戻りや社内説得の材料不足につながります。
市場 / 競合 / 顧客調査(定量×定性)
外部環境を多角的に把握し、「戦略的な発見」を抽出します。
- 定量調査: 市場規模、シェア、既存の顧客データなどから、数値的な立ち位置を把握します。調査項目の選定基準としては、市場規模・成長率、競合シェア、自社の顧客データ(年齢・性別・地域・購買履歴等)が挙げられます。
- 定性調査: ユーザーインタビューや行動観察を行い、数値には表れない「感情」や「文脈」を深掘りします。インタビューでは、顧客の購買プロセス、ブランドへの期待、不満点、理想の体験などを聞き出します。
【実践事例:富士急ハイランド(ウェブサイトリニューアル)】富士急ハイランドのウェブサイト刷新プロジェクトでは、関係者を集めたワークショップによる「現状の役割診断」 がプロジェクトの鍵となりました。
当初のサイトは、TVCM同様に「絶叫」を前面に押し出した広告的なデザイン(赤・黒・黄の配色)でした。しかし、診断の結果、「絶叫イメージは既に定着している」「サイト訪問者はむしろチケット購入や営業時間など、快適に遊ぶための機能を求めている」という課題が浮き彫りになりました。
そこで、サイトの役割を「ブランドの押し付け」から「遊びの質を高めるツール」 へと再定義。絶叫が苦手な層への配慮や、スムーズな情報提供を優先する設計へと舵を切ることで、ユーザー体験を根本から改善しました。 このように、思い込み(絶叫を推すべき)を捨て、ユーザーが真に求めている体験を診断することが、プロジェクトの第一歩となります。
絶叫ブランディングサイトからユーザーが「遊びの質を高める」ためのサイトへリニューアル - 株式会社デスケル(DSCL Inc.)

社内ヒアリング / 現状評価
ブランド構築において最も困難なのが「社内の合意形成」です。プロジェクト初期に、従業員・経営層・営業現場へのヒアリングを実施します。
- 経営層: ビジョンや事業目標との整合性
- 現場: 顧客から実際に言われている評価や、運用上の課題
これらを可視化(現状図の作成)することで、社内の認識のズレを埋め、プロジェクトのゴールを共有するための土台を作ります。
ヒアリング対象者の選定には、経営層(意思決定者)、現場責任者(実務の実態を把握)、営業担当(顧客の声を直接聞いている)など、多様な視点を持つステークホルダーを含めることが重要です。
ヒアリングの場では、「現状の課題は何か」「理想のブランド像は何か」「顧客からどのような評価を受けているか」などを聞き出します。評価軸として、ブランド認知度、ブランドイメージ、顧客満足度、社内理解度などを使い、結果を可視化します。
2. ブランドコンセプトの言語化(価値 / ストーリー / 行動原則)
「何を大切にするのか」を言葉にし、組織内部で強固に合意するフェーズです。ここが曖昧だと、後のデザインや施策がブレてしまいます。
価値命題・タグライン・ナラティブの構築
ブランドアイデンティティの核となる要素を定義します。
- 価値命題 (Value Proposition): 顧客にもたらす本質的な価値は何か。競争優位性との組み合わせで定義します。例えば、「高度な技術力」と「柔軟な対応力」を組み合わせることで、単なる技術提供ではなく、「顧客の要望に応える技術パートナー」という価値命題が生まれます。
- タグライン: 価値命題を短く、記憶に残る言葉で表現したもの。社内向けと外部向けで異なる表現を使うこともあります。社内向けは「行動指針」として機能し、外部向けは「ブランドメッセージ」として機能します。
- ナラティブ: ブランドが生まれた背景、信念、目指す未来を一つのストーリーとして整理したもの。創業者の想い、事業の変遷、顧客との関係性、未来へのビジョンなどを時系列で整理します。
【実践事例:協立金属工業】ステンレス線材の伸線加工を行う協立金属工業の事業パンフレット刷新では、既存の営業ツールでは伝えきれていなかった「技術力と対応力の言語化」 が課題でした。
そこで、単なる製品スペックの羅列ではなく、医療や半導体分野にも対応できる「高度な技術」と、顧客の要望に応える「柔軟な対応力」こそが真の価値であると再定義しました。
この価値(コンセプト)を明確に言語化した上でパンフレットの構成に落とし込むことで、新規顧客に対しても自社の強みが一瞬で伝わる営業ツール(販路拡大の武器)への転換に成功しています。
高度な技術力と柔軟な対応力を伝えるための事業パンフレットリニューアル - 株式会社デスケル(DSCL Inc.)
社内合意形成ワークショップ
複数のステークホルダーが同じ理解を持つためには、一方的な発表ではなく「共創」のプロセスが不可欠です。ブランディングプロセスで合意形成が難しい場合、構造化されたファシリテーション手法を使うことが有効です。
例えば、デスケルが提供する「デスケルメソッドカード」のようなツールを用いて、「問い」と「視点」を組み合わせながら議論を進める方法があります。これを利用することで異なる部門の視点を統合し、全員が納得感を持って次のフェーズへ進めるよう意思決定フローを設計します。

ワークショップの進め方
- 参加者選定: 経営層、営業、マーケティング、デザインなど、異なる部門の代表者を集めます。各部門の視点を統合することで、分断された視点を統合できます。
- 問い立て: 「ブランドの価値とは何か?」「顧客に何を約束するか?」など、核心的な問いを設定します。
- 議論: デスケルメソッドカードを使って、異なる視点から議論を進めます。各参加者が自分の視点を共有し、他者の視点を理解することで、共通認識が生まれます。
- 合意: 議論の結果を整理し、全員が納得感を持って次のフェーズへ進めるよう意思決定フローを設計します。
異なる部門の視点を統合する工夫としては、各部門の「強み」と「課題」を可視化し、それらを統合する形でブランドコンセプトを設計する方法があります。
例えば、営業部門は「顧客との関係性」を重視し、マーケティング部門は「市場での差別化」を重視する場合、両方の視点を統合した「顧客との関係性を深める差別化」というコンセプトが生まれます。
3. ビジュアルアイデンティティの設計(見せ方)
言語化されたコンセプトを「視覚言語」へと翻訳し、具体的な体験へと落とし込みます。
ビジュアル言語の抽出と設計
価値命題やナラティブから、視覚的な方向性を導き出します。
- ビジュアル調査: 競合や参考事例を調査し、市場での視覚的な立ち位置を把握します。どのような色彩やタイポグラフィが使われているか、どのようなトーン&マナーが設定されているかを分析します。
- ムードボード作成: 調査結果を踏まえ、目指すトーン&マナーを可視化します。定義した価値命題やナラティブから、視覚的な方向性を導き出します。
- 色彩戦略: ブランドの性格を表す「主色・副色」のルールを設定します。主色はブランドの核となる色で、副色は補助的な役割を果たします。使用規則として、主色と副色の組み合わせ方、背景色との関係、アクセントカラーの使い方などを定義します。
- タイポグラフィ選定: ブランドの性格を表す書体を選定します。読みやすさとブランドの個性のバランスを考慮し、ウェブフォントと印刷フォントの両方を選定します。
- 視覚的なトーン&マナーの定義: 写真の撮影スタイル、イラストのタッチ、レイアウトの傾向など、視覚的な表現の方向性を定義します。
【実践事例:WOLFPACK(ウルフパック)】アナログレコード制作サービス「WOLFPACK」のサイトリニューアルでは、競合との差別化要因である「LOVE & CARE(クオリティとホスピタリティ)」 という目に見えない価値を、いかに視覚的な信頼感として実装するかがテーマでした。
既存のブランド資産である「キューブ型(箱)のロゴ」をデザインパーツとして分解し、見積もり画面やメニューの背景パターンとしてサイト全体に展開。これにより、無意識レベルでブランドの統一感を感じさせる視覚言語を構築しました。
また、遠く離れたチェコのプレス工場や、サポートするスタッフの「顔」を写真として多用することで、デジタル完結しがちな現代のアーティストに対し、「共に作品を作るパートナー」としての体温(ホスピタリティ)が伝わる体験を設計しています。
音楽を形あるアートにするアナログレコードプレスサービスのサイトリニューアル - 株式会社デスケル(DSCL Inc.)
デジタル・接客での体験設計への落とし込み
言語化されたブランドコンセプトを各接点の体験設計に展開します。決定したビジュアルを、実際の顧客接点に落とし込むことで、ブランドの一貫性を保ちます。
デジタル接点(ウェブサイト・アプリ)への展開:
- 画面設計: カラーパレット、タイポグラフィ、レイアウト原則を適用し、ブランドの視覚言語を反映した画面を設計します。
- インタラクション: ボタンのホバー効果、ページ遷移のアニメーション、フォームの入力体験など、ユーザーとのインタラクションを通じてブランドの性格を伝えます。
- タッチポイント: ローディング画面、エラーメッセージ、成功メッセージなど、細かいタッチポイントでもブランドの一貫性を保ちます。
オフライン接点(店舗・営業資料・名刺・包装)への展開:
- 店舗: 内装デザイン、サイン計画、スタッフのユニフォームなど、物理的な空間でもブランドの視覚言語を反映します。
- 営業資料: パンフレット、提案書、プレゼンテーション資料など、営業活動で使う資料にもブランドの視覚言語を適用します。
- 名刺・包装: 名刺のデザイン、商品のパッケージ、配送箱など、細かい接点でもブランドの一貫性を保ちます。
カスタマージャーニーに沿った一貫性の保ち方:
カスタマージャーニーの各ステージ(認知→検討→購入→利用→推奨)で、ブランドの視覚言語が一貫して伝わるように設計します。
例えば、認知段階ではウェブ広告やSNS投稿でブランドの視覚言語を伝え、検討段階ではウェブサイトや営業資料で詳細な情報を提供し、購入段階では店舗やECサイトで購入体験を提供します。
優先度づけ(フェーズ別の実装順序):
全ての接点を一度に刷新するのではなく、優先度をつけて段階的に実装します。まずは、顧客との接点が多い「ウェブサイト」や「営業資料」から始め、その後「店舗」や「包装」などに展開していきます。
4. ブランドガイドライン・デザインシステムの構築

作成したクリエイティブを、組織全体で正しく運用し続けるための仕組みを作ります。
ブランドガイドラインの作成と運用
社内メンバーや外部パートナーが迷わずブランドを表現できるよう、ルールブック(ガイドライン)を策定します。
- 構成要素: ロゴの使用規定(アイソレーション等)、カラーパレット、指定フォント、写真・イラストのトーンなど。
- OK / NG:「やっていいこと」と「やってはいけないこと」を具体例で示します。
ガイドラインの構成要素としては、ロゴの使用規定(アイソレーション、最小サイズ、配置ルール等)、カラーパレット(主色・副色・アクセントカラーの使用規則)、指定フォント(ウェブフォント・印刷フォントの選定と使用方法)、写真・イラストのトーン(撮影スタイル、イラストのタッチ、使用シーン等)、トーン&マナー(メッセージの書き方、話し方等)などが挙げられます。
OK / NGを具体例で示すことで、社内メンバーや外部パートナーが迷わずブランドを表現できるようになります。例えば、ロゴの使用において「背景色とのコントラストを確保する(OK)」と「ロゴを変形させない(NG)」などを示します。
ガイドラインは一度作って終わりではなく、更新サイクルを決めてバージョン管理していくことが重要です。定期的にレビューを行い、新しい接点や用途に合わせて更新します。
ステークホルダーへの周知方法としては、社内ポータルでの公開、ワークショップでの説明、PDF形式での配布などが挙げられます。
デザインシステムとしての拡張
ウェブサービスやアプリなどでは、ガイドラインをさらに発展させ、UIパーツをコンポーネント化した「デザインシステム」を構築します。これにより、運用コストを下げながらブランドの一貫性を維持します。
コンポーネント化の考え方としては、ボタン、カード、フォーム、ナビゲーションなど、よく使われるUIパーツをコンポーネントとして定義します。各コンポーネントには、デザイン仕様(サイズ、色、余白等)と使用方法(使用シーン、組み合わせ方等)を明記します。
デザイン/エンジニア間の連携としては、Figmaなどのデザインツールでコンポーネントを定義し、エンジニアが実装する際の仕様書として活用します。ツール活用としては、Figma、Storybook、デザインシステム管理ツールなどが挙げられます。
更新と保守体制としては、デザインシステムの更新プロセスを定義し、定期的にレビューを行います。新しいコンポーネントの追加や既存コンポーネントの改善を、デザイン / エンジニア / プロダクトマネージャーが協力して進めます。
5. 伝え方の設計:社内外への浸透
作ったブランドを「誰に」「どう伝えるか」を設計し、組織として体現するフェーズです。
セグメント別メッセージング&チャネル戦略
まずは、ターゲット顧客ごとに、ブランドの価値をどう翻訳して伝えるかを設計します。
- ターゲット別メッセージング: 同じ価値命題でも、経営者向けと現場担当者向けでは響く言葉が異なります。経営者向けには「事業成長」「競争優位性」などの言葉を使い、現場担当者向けには「業務効率化」「顧客満足度向上」などの言葉を使います。価値命題をターゲットごとに言い換えることで、より響くメッセージになります。
- チャネル別戦略: ウェブ、SNS、PR、営業、店舗など、各チャネルでの役割と発信内容を一貫させます。ウェブでは詳細な情報を提供し、SNSでは短いメッセージでブランドの価値を伝え、PRではメディアを通じてブランドストーリーを発信します。
- カスタマージャーニー上でのタッチポイント: 認知→検討→購入→利用→推奨の各ステージで、適切なメッセージとチャネルを配置します。認知段階ではウェブ広告やSNSでブランドの存在を知らせ、検討段階ではウェブサイトや営業資料で詳細な情報を提供します。
- 一貫性チェック: 各チャネルで発信するメッセージが、ブランドの価値命題と一貫しているかを定期的にチェックします。
組織内浸透と従業員ブランディング
外部への発信と同様に内部(社員)への発信も大切です。内部の人間がブランドの最大の理解者であり、体現者である必要があるからです。
- 従業員向けワークショップ: ガイドラインのルールだけでなく、「なぜそうなのか」という背景を共有します。ブランドの価値命題やナラティブを説明し、社員がブランドの「意味」を理解できるようにします。
- ブランドガイドの「なぜ」の説明: ガイドラインの各ルールについて、「なぜこのルールが必要なのか」「どのような意図があるのか」を説明します。ルールの背景を理解することで、社員が主体的にブランドを体現できるようになります。
- 行動指針への翻訳: ブランドの価値観を、日々の業務や行動指針に翻訳します。例えば、「顧客第一」という価値観を、「顧客からの問い合わせには24時間以内に返信する」という具体的な行動指針に落とし込みます。
- インセンティブ設計: ブランドを体現する行動を評価し、インセンティブを設計します。例えば、顧客満足度調査で高評価を得た社員を表彰するなど、ブランドを体現する行動を促進します。
6. 運用・評価・改善サイクル(測定と学習)

ブランディングはリリースして終わりではありません。効果を測定し、育てていくプロセスです。
KPI設計と効果測定
ブランディングの成果を「数字」で把握し、改善に繋げます。成果が見えにくいと言われるブランディングですが、指標を設定して定点観測することで、効果を可視化できます。
ブランド指標の選定:
- 認知度: ブランド名を知っている人の割合。市場調査やアンケートで測定します。
- 好感度: ブランドに対して好意的な印象を持っている人の割合。
- 純粋想起率: カテゴリー名を聞いたときに、そのブランドを最初に思い浮かべる人の割合。
- 選好度: 競合他社と比較して、そのブランドを選好する人の割合。
- NPS(推奨意向): ブランドを他者に推奨する意向。0〜10点のスケールで測定し、推奨者(9〜10点)の割合から批判者(0〜6点)の割合を引いた値がNPSです。
事業指標との連携
- 指名検索数: ブランド名で検索する人の数。Google Analyticsなどで測定します。
- CVR(コンバージョン率): ウェブサイト訪問者のうち、問い合わせや資料ダウンロードなどのコンバージョンを達成した人の割合。
- リピート率: 既存顧客の再購入率や継続利用率。
- 顧客獲得単価: 1人の新規顧客を獲得するためにかかるコスト。
ブランド指標と事業指標は相互に関連しています。例えば、ブランド認知度が向上すると指名検索数が増加し、指名検索数が増加するとCVRが向上する、という関係があります。
定期的な測定方法
- ブランド調査: 年1回または四半期ごとに、市場調査会社に依頼してブランド指標を測定します。
- アナリティクス: Google Analyticsなどで、ウェブサイトの訪問数、コンバージョン数、リピート率などを定期的に確認します。
- 満足度調査: 顧客満足度調査を実施し、ブランド体験の質を測定します。
ダッシュボード設計
ブランド指標と事業指標を一元的に管理するダッシュボードを設計します。ダッシュボードには、主要な指標を時系列で表示し、トレンドを把握できるようにします。また、目標値と実績値を比較し、改善が必要な領域を明確にします。
レビュー会と改善アクション
定期的な振り返りと改善ポイントの意思決定を行います。定期的にレビュー会を開催し、データに基づいて次のアクションを決定します。
レビュー会の設計
- 頻度: 月1回または四半期ごとに開催します。頻度は、ブランディングの成熟度や市場の変化の速さに応じて調整します。
- 参加者: 経営層、マーケティング責任者、ブランド担当者など、ブランディングに関わる主要なステークホルダーを集めます。
- アジェンダ: KPIの実績報告、課題の抽出、改善案の議論、次のアクションの決定などを行います。
データ解釈と課題抽出
ダッシュボードのデータを解釈し、課題を抽出します。例えば、「ブランド認知度は向上しているが、好感度が低下している」という場合、「認知度向上施策は成功しているが、ブランド体験の質に課題がある」という仮説を立てます。
この後は、以下の流れで改善を回していきます。
- 改善仮説の立案:抽出した課題に対して、改善仮説を立案します。例えば、「ブランド体験の質を向上させるため、ウェブサイトのUI / UXを改善する」という仮説を立てます。
- 仮説検証型の実験:改善仮説を検証するため、小規模な実験を行います。例えば、ウェブサイトのUI/UXを改善したページと改善していないページを比較し、コンバージョン率の変化を測定します。
- 学習のスケール化:実験で効果が確認できた改善案は、全社的にスケール化します。効果が確認できなかった改善案は、次の仮説を立てて再度実験を行います。
「仮説→実行→検証→学習」のサイクルを回し続けることで、ブランドは市場の変化に合わせて進化し続けることができます。
まとめ
ブランディングを成功させるための手順は、大きく以下の3点に集約されます。
- 「在り方」: 理念・価値観を内部で合意し、言語化する。ここがすべての土台です。
- 「見せ方」: 言語化した理念をビジュアルと体験に落とし込み、一貫性を持たせます。
- 「伝え方」: 組織全体でブランドを体現し、測定と改善を繰り返しながら市場に浸透させます。
重要なポイント:
- 3つの段階は「前から後ろへ」一方向ではなく、情報をもとに何度も立ち返る学習プロセスです。
- 各段階で異なるステークホルダー(経営層・デザイナー・マーケター等)が主体になり、合意形成が鍵となります。
- デスケルメソッドカードなどの手法を使うことで、分断された視点を統合できます。
まずは自社の現状診断から始め、問題を言語化することからスタートしてみてください。
ブランディングの手順に関するよくある質問(FAQ)
Q ブランディングの手順はどのような流れで進めますか?
ブランディングの手順は、大きく3つの段階に分かれます。
- 「在り方」:理念・価値観を内部で合意し、言語化します。
- 「見せ方」:言語化した理念をビジュアルと体験に落とし込みます。
- 「伝え方」:組織全体でブランドを体現し、測定と改善を繰り返しながら市場に浸透させます。
この3段階を一貫したストーリーとして通すことが、ブランディング成功の鍵となります。
Q ブランディングの進め方で最も重要なポイントは何ですか?
A. 最も重要なポイントは、「言葉(在り方)」→「体験(見せ方)」→「運用(伝え方)」という3つの段階を一貫したストーリーとして通すことです。言語化した理念が、ビジュアルと体験に落とし込まれ、組織全体に浸透することで、ブランドが機能します。この一貫性がなければ、どんなに美しくデザインしても機能しません。
Q ブランディングプロセスで合意形成が難しい場合の対処法は?
A. ブランディングプロセスで合意形成が難しい場合、構造化されたファシリテーション手法を使うことが有効です。デスケルが提供する「デスケルメソッドカード」は、「問い」と「視点」を組み合わせながら議論を進めるツールです。異なる部門の視点を統合し、全員が納得感を持って次のフェーズへ進めるよう意思決定フローを設計します。
Q ブランディングの手順で最初に取り組むべきことは?
A. 最初に取り組むべきことは、現状診断です。ブランドの「在り方」を決める前に、現在地を正しく把握することから始めます。外部環境(市場・競合・顧客)と内部環境(社内の理解度・課題・理想像)の両方を把握し、診断チェックリストを使って結果を整理します。ここでの調査不足は、後々の手戻りや社内説得の材料不足につながります。
Q ブランディングプロセスの各段階で必要な成果物は?
各段階で以下の成果物を作成します。
在り方:
- 市場分析レポート、競合分析表、顧客ペルソナ
- 内部評価マップ、課題整理シート、理想像の共有表
- 価値命題ステートメント、タグライン案、ナラティブ
- 合意形成議事録、デスケルメソッドカードを使った意思決定マップ
見せ方:
- ビジュアル方向性ドキュメント、ムードボード、カラーパレット定義
- デジタル / オフライン別の展開仕様書、カスタマージャーニーマップ
- デジタル / PDF形式のガイドライン、ライブラリ化されたアセット
- デザインシステム仕様書、コンポーネントライブラリ
伝え方:
- メッセージマトリクス、チャネル別ガイドライン
- 従業員向けガイド、ブランドシナリオ集
- KPI定義シート、測定ダッシュボード
- レビュー会議事録テンプレート、改善案の優先度マトリクス
デスケルは、企業の理念を具体的な顧客体験へと翻訳する伴走型のブランディング支援を提供しています。