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ウェブブランディングとは?意味・目的・手順・施策・事例まで解説

ウェブブランディングとは?意味・目的・手順・施策・事例まで解説

ウェブサイトやSNS、デジタル広告など、顧客とのタッチポイントが多様化した現代において、「ウェブ上で自社をどう見せるか」は企業への信頼や評価に直結します。

ウェブブランディングとは、単に「ウェブサイトの見た目を綺麗にする」ことではありません。ウェブ上のあらゆる接点で、企業の核となる価値観(在り方)を一貫した体験(見せ方・伝え方)として設計・提供すること です。

株式会社デスケル(DSCL Inc.)では、これを「単なるデザイン制作」ではなく、「企業の思想(人格)と、表出する体験(外見)の不一致を解消するプロセス」 と定義しています。

本記事では、ウェブブランディングの定義や基礎知識から、実務で使える具体的な手順、サイト種別ごとの施策、そしてデスケルが実際に手掛けた成功事例までを体系的に解説します。

ウェブ制作やリニューアルを検討しているものの、「何から手を付けるべきか分からない」「単なるデザイン変更で終わりたくない」と考えている担当者様にとって、次の一手を決めるための実践ガイドとしてご活用ください。

ウェブブランディングの概念図

ウェブブランディングとは?ウェブマーケティングとの違い

まずはウェブブランディングの基本的な定義と、混同されやすい「ウェブマーケティング」との役割の違いを整理しましょう。

ウェブブランディングの定義

ウェブブランディングとは、ウェブサイトやデジタル接点を通じて、一貫したブランド体験を設計・提供し、顧客の認知・信頼・好意的なイメージを形成する活動 のことです。

アクセス数を短期的に稼ぐことよりも、「この企業はこういう価値観を持っている」「信頼できる」という 企業の姿勢そのものをウェブ上で正しく伝え、ブランド資産として蓄積すること に主眼を置きます。

ウェブマーケティングとの役割の違い

ウェブブランディングとウェブマーケティングは対立するものではなく、補完し合う関係です。違いはその「目的」と「時間軸」です。

ウェブブランディングとウェブマーケティングの違い

例えば、デスケルのクライアントである製造業企業の事例では、マーケティング(集客)の前段階として、ウェブサイトを通じて「技術力とグローバルな事業規模」を正しくブランディングし直したことで、結果的に海外からの問い合わせの質が向上しました。

ウェブブランディングの目的

多くの企業がウェブブランディングに取り組む主な目的は、以下の4つに集約されます。

  1. 情報のストック
  2. 接点の継続
  3. 効果測定
  4. 他施策との連動

ウェブブランディングのメリット

ウェブブランディングのメリット

ブランディングの手法は多岐にわたりますが、あえて「ウェブ」を中心に行うことには、ウェブ特有の決定的なメリットがあります。

1. 情報を「資産」としてストックできる

ウェブサイトは、広告のように期間や枠の制限がありません。企業の歴史、創業の想い、社員のストーリーなどを、コンテンツという「資産」として蓄積・発信し続ける ことができます。 デスケルが支援したウェブメディア運営の事例では、銭湯文化の魅力を記事としてストックし続けることで、若年層のファンコミュニティ形成に成功しています。

2. 顧客接点を継続的に持てる

ウェブサイトをハブ(中心)とし、SNS、メールマガジン、オウンドメディアなどを連携させることで、顧客と継続的な接点を持てます。「認知→興味→検討→ファン化」という顧客のフェーズに合わせ、適切なタイミングでブランドメッセージを届けることが可能です。

3. 効果を可視化・改善しやすい

感覚的な評価になりがちなブランディングですが、ウェブであればデータが取れます。どのコンテンツが読まれているか(興味)、どこで離脱しているか(期待外れ)を分析することで、データに基づいたブランド体験の改善 が可能になります。

4. 他施策との連携が容易(採用・営業・広報)

ウェブで作ったコンテンツ(導入事例インタビュー、開発秘話、ブランドムービーなど)は、ウェブサイト上で完結させる必要はありません。

  • 営業活動: 商談時にタブレットで「導入事例」を見せ、説得力を高める。
  • 採用活動: 会社説明会で「社員インタビュー記事」を配布し、カルチャーへの理解を深める。
  • 広報活動: プレスリリースに、ウェブ上の「開発ストーリー」へのリンクを貼り、記者の理解を助ける。

このように、ウェブサイトを情報のハブ(中心)にすることで、営業資料や採用ピッチ資料を一から作る手間が省け、全社的なコミュニケーションコストの削減と、発信内容の一貫性担保(ブランド・コントロール)につながります。

また、「採用力の向上」にウェブブランディングを活用することが注目されています。求職者は応募前に必ずウェブサイトを確認します。そこで企業の文化や働く環境が透明性高く、かつ魅力的に伝わっているかどうかが、優秀な人材を獲得できるかを左右します。実際にデスケル自身の採用活動においても、自社のカルチャーをウェブ上でオープンに発信し続けたことで、ミスマッチの少ない採用に成功しています。

ウェブブランディングの手順

ウェブブランディングの手順

ウェブブランディングを成功させるには、「とりあえずサイトをリニューアルする」のではなく、戦略的な手順を踏むことが不可欠です。デスケルでは、以下の4ステップで 「デスケルメソッドカード」 やワークショップを活用し、社内の合意形成を図りながら進めます。

STEP1:ビジョン・ブランド価値・ウェブの役割を整理する

ウェブブランディングは「企業理念のウェブへの翻訳」です。まずは土台となる以下の要素を言語化します。

  • 企業のビジョン・提供価値: 自社は何を目指し、顧客にどんな価値を約束するのか。
  • ウェブの役割定義: 事業戦略の中でウェブは何を担うのか(認知拡大? 信頼獲得? 採用強化?)。

デスケルが自社のコーポレートサイトをリニューアルした際も、まずは「自分たちは何者か」を再定義し、それを「EMPOWERED BY DESIGN」というビジョンに落とし込むことから始めました。

STEP2:ウェブサイトのコンセプトと情報構造を決める

定義したブランド価値を、ウェブ上でどう見せるか(コンセプト)と、どう伝えるか(情報設計)に落とし込みます。

  • コンセプト策定: サイトを訪れたユーザーに抱いてほしい「第一印象」を言語化します。
  • 情報構造(サイトマップ)設計: 例えば公益財団法人の事例では、膨大な事業情報を整理し、ユーザーが迷わず目的の情報に辿り着ける構造を設計することで、組織としての「誠実さ・公共性」を表現しました。

STEP3:デザイン・UX/UIを設計する

コンセプトを視覚(ビジュアル)と体験(使い勝手)に変換します。

  • ビジュアルトーン: ブランドカラー、フォント、写真のトーン&マナーを統一します。
  • UX(ユーザー体験): スマホでの見やすさや、問い合わせフォームの使いやすさなど、ストレスのない体験を提供することも「ブランドへの信頼」につながります。

STEP4:コンテンツ制作・公開・運用サイクルを回す

ウェブブランディングは公開して終わりではありません。コンテンツを更新し続けることでブランドは育ちます。 社員インタビューや導入事例など、ブランドの姿勢が伝わる記事を継続的に発信し、効果測定を行いましょう。


ウェブブランディング施策の具体例(サイト種別)

ウェブブランディングは、サイトの目的によって注力すべき施策が異なります。

コーポレートサイトでの施策例

企業の「顔」として、信頼性と世界観を最も強く打ち出す場所です。

  • トップメッセージ: 代表の言葉や動画で、企業のミッション・パーパスを情緒的に伝える。
  • グローバル対応: 海外展開している企業の場合、多言語対応だけでなく、グローバル基準のデザインルールを適用することで、国際的な信頼感を醸成します。

サービス/プロダクトサイトでの施策例

機能のスペックだけでなく、そのサービスを使うことで得られる「未来」や「体験」を伝えます。

  • ストーリーテリング: 単なる機能説明ではなく、「なぜ開発したか」「どう社会を変えるか」という物語を伝えます。

採用サイト・オウンドメディアでの施策例

スキルマッチだけでなく、カルチャーマッチ(価値観の共有)を重視した発信を行います。

  • カルチャーの発信: デスケル自身もnoteを活用し、社内の勉強会やイベントの様子を発信することで、応募者に「実際の雰囲気」を伝え、入社後のミスマッチを防いでいます。

ウェブブランディングの成功事例

デスケルが実際に支援を行った、ウェブブランディングの成功事例をご紹介します。

1. リサイクル事業のコーポレートブランディング

(遠東石塚グリーンペット株式会社 様)

課題: 台湾の遠東グループと石塚硝子の合弁により設立された、日本最大級のリサイクルペットボトル工場を有する企業。事業拡大に伴う人材確保が急務だったが、設立間もないBtoB企業であるため一般的な認知度が低く、また事業の先進性や社会貢献性が求職者に十分に伝わっていなかった。

施策と成果: 従業員採用の強化を主目的として、コーポレートサイトを全面的にリニューアル。「Bottle to Bottle(廃ペットボトルを再びペットボトル原料へ)」という循環型社会を支える事業ミッションを核に、クリーンで先進的なデザインへ刷新しました。工場で働く人々の真摯な姿や環境への貢献を可視化することで、求職者に対するブランドイメージを大きく向上させ、採用活動の成功を後押ししました。

日本最大手リサイクルペットボトル工場の従業員採用に向けたコーポレートサイトリニューアル - 株式会社デスケル(DSCL Inc.)

2. 公益財団法人の情報設計とブランディング

(公益財団法人 放送文化基金 様)

課題: 助成・顕彰事業など多岐にわたる活動を行っているが、情報が複雑化し、ウェブサイトでの情報発信が整理されていなかった。

施策と成果: 膨大な情報をユーザー視点で再整理し、迷わずに情報へ到達できるUI/UXを設計。「文化を支える」という財団の使命を、シンプルかつ格式あるデザインで表現しました。情報の透明性とアクセシビリティを高めることで、公共機関としての信頼性をウェブ上で体現した事例です。

日本のメディア文化を支えるために。放送文化基金ウェブサイトリニューアル - 株式会社デスケル(DSCL Inc.)

3. 競合激化するリノベーション業界での差別化

(株式会社フィールドガレージ 様)

課題: 設立から20年以上続くリノベーション会社ですが、近年は競合他社が増加し、ウェブ上での差別化が難しくなっていました。既存サイトは5年前に構築されており、施工事例などのコンテンツは充実しているものの、情報構造が複雑化し、ユーザーが必要な情報に辿り着きにくい状態でした。

施策と成果: まずは第三者視点での徹底的なサイトリサーチと、全社員参加のワークショップを実施し、ブランドの強みを再定義。「安心感・親密性(鮮やかなオレンジ)」と「品質の確かさ(設計図のような線画)」を両立させたデザインへ刷新しました。 特に重要となる「施工事例」は、顧客目線で細かくタグ検索ができるよう機能を拡張。同時にCMSの操作性を整理して社内の運用負荷を下げることで、常に鮮度の高い情報を発信し、顧客に「ここなら安心だ」と感じてもらえるサイトへと生まれ変わりました。

顧客に安心と信頼感を与えるためのコーポレートサイトリニューアル - 株式会社デスケル(DSCL Inc.)


ウェブブランディングでよくある失敗と注意点

ウェブ制作は、見た目のデザインに意識が向きがちですが、以下の失敗パターンに注意が必要です。

  1. 目的不在のまま制作してしまう 「かっこいいサイトにしたい」という曖昧なオーダーで進めると、ブランドの価値が伝わらない自己満足なサイトになりがちです。
  2. 社内の合意形成ができていない担当者だけで突っ走ってしまい、公開後に経営層や他部署から「自分たちのイメージと違う」と反発を招くケースです。デスケルでは、初期段階で**「デスケルメソッドカード」** を用いたワークショップを行い、関係者全員で「ブランドの提供価値」について合意形成を図るプロセスを重視しています。
  3. 「公開して終わり」になる 更新体制を決めずにスタートし、最終更新日が数年前のまま放置されると、かえってブランドの信頼を損ないます。

成功の鍵は「共創(Co-Creation)」と「運用設計」です。 社内の関係者と「誰に、何を、どう伝えるか」を徹底的にすり合わせ、公開後もチームでサイトを育てていく体制を作ることが、ウェブブランディング成功への近道です。


まとめ

ウェブブランディングは、企業のブランド価値をウェブ上で可視化し、ユーザーが一貫した世界観を受け取れるよう設計する取り組みです。

  • 役割整理:ウェブで何を達成するか決める(採用? 信頼? グローバル対応?)
  • コンセプト:誰にどんな印象を与えたいか言語化する
  • UX/UI:使い勝手とビジュアルで体験を作る
  • 運用:コンテンツを更新し、信頼を積み重ねる

この手順を踏むことで、ウェブサイトは単なる情報掲載の場から、「信頼を生み出し、ファンを育てるブランド資産」 へと変わります。

自社のウェブサイトは、ブランドの魅力を正しく伝えられているでしょうか? まずは現状のサイトが「誰に」「どんな印象」を与えているか、診断することから始めてみてはいかがでしょうか。

デスケルは、企業の理念を具体的な顧客体験へと翻訳する伴走型のブランディング支援を提供しています。

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ブランディングチーム。企業やプロダクトのブランド戦略を立案・実行。ビジュアルアイデンティティからブランドストーリーまで、一貫性のあるブランド体験を創造します。